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適量の飲酒による健康効果

昔から、「酒は百薬の長」といわれ、適量の飲酒はストレス解消や食欲の増進をもたらすとされてきました。近年では、コレステロールの調整など生活習慣病の予防効果が明らかになっています。今回は、適量の飲酒による健康効果をご紹介いたします。

近年、若い女性の飲酒率が上昇

日本における年間のアルコール消費量は、2005年頃からやや減少傾向にあるといわれています。ただ、世界的にみると消費量は決して少ない方ではなく、米国やカナダと同じ、中レベルといったところです。

この50年、世界各国の飲酒に関する変化で特徴的なのは、女性の飲酒率が上昇していることです。これは、日本も同様で、1950年以降男性の飲酒率に大きな変化はありませんが、とりわけ、若い女性の飲酒率が高まっています。一因として考えられるのは、ワインなどによる飲酒の健康効果が女性たちに認識されつつあることです。

適量の飲酒と死亡率にU字型関係

2012年11月15日(木)、国立がんセンターで、「飲酒と健康に関する講演会」が開催されました。この中で、秋田大学名誉教授の滝澤行雄氏が「酒の功罪とその科学的根拠」と題して講演しました。

適量の飲酒による健康効果—。
そのことが明らかになったのは、米国での「適量飲酒による冠動脈心疾患の予防効果」という研究報告でした。その後、全米の「健康栄養調査」でも、「中等量飲酒は生存期間を3%延ばし、とくに男性の冠動脈心疾患の死亡率を4%引き下げる」ことが示されました。

適量の飲酒はコレステロールの酸化変性を抑えます。また、血小板の凝集を制御し、虚血性心疾患を予防することなどが明らかになりつつあります。適量の飲酒と死亡率との間にU字型関係がみられることは疑いないと認識されるようになってきたと滝澤氏はいいます。

適量の飲酒、高齢者の認識力低下を抑制

適量の飲酒は、高齢者の認識力低下の抑制にも関与することが明らかになりつつあります。欧米の報告によると、認知症の発症リスクが飲酒者は非飲酒者に比べ、20~40%低下することが分かったといわれています。

また、最近の研究で、中等量(日本酒で1日あたり2合)の飲酒は女性の体内のエストロゲン値を高め、骨粗鬆症のリスクを低減させるという報告もあります。

以前、国立がんセンターで行った調査でも、日本酒を1日に1合(180ml)以下飲む人は全く飲まない人に比べ、全死亡率が低いことが明らかになっています(1990-1996年、岩手、秋田、長野、沖縄の4県、40-59歳の男性約2万人にアンケート)。

他にも、適量の飲酒による健康効果については、世界からさまざまな研究が発表されています。

「1週間に2~6杯の飲酒は心臓病の急死のリスクを減らす」という報告もあります(Journal of the American Heart Association誌)。

ハーバード大学が内科医健康調査で21,537人の健康な男性の飲酒について約12年間調べたところ、1週間に2~6杯の場合、心臓病で急死したのは141人で、全く飲酒しないか1日2杯以上の男性と比べると急死のリスクが低いことが分かったといいます。
ただ、飲酒量が多い場合、とくに1日2杯以上になると心臓病死のリスクが高まることも明らかになったとしています。

卒中のリスク低下にも効果的

適量の飲酒は卒中のリスク低下にも効果的なようです。「1日に2杯までの飲酒で、卒中の危険性が半減する」という報告もあります(Journal of the American Medical Association誌)。

コロンビア大学研究グループが行った調査で、虚血性卒中を起こしたことのある男女677人の飲酒習慣と同疾患の経験がない1,139人とを比較したところ、1日に2杯程度の飲酒では卒中の危険性が低下したと報告しています。ただし、1日7杯以上飲むと危険性はかえって3倍に増加したといいます。

ビールについても、「心臓病や卒中による死亡率を下げる」という報告が出ています。University of New South Walesの研究グループが、1930年以前に生まれた男性1,200人と女性1,500人を対象にした調査ところ、心臓病による死亡率がビールを飲まない男性のグループは51%、飲むグループは42%で死亡率が低かったといいます。また、女性も飲まないグループは51%、飲むグループは43%でした。ただし、研究者は「飲みすぎるとその有効性が失われる」と付け加えています。

赤ワイン、ヘリコバクター・ピロリ菌を除去

ところで、前述の女性の飲酒率の増加ついてはワインブームも関連しているようですが、赤ワインの効用についても続々報告されています。
赤ワインはコレステロールの動脈壁への蓄積を防止し、心臓病を防ぐことが報告されています(Journal of the American College of Nutrition誌)。

それによると、ニュージャージー州の研究者グループが試験管での研究で、ワインにプラーク形成の第一段階であるコレステロールの酸化抑制効果を確認、85~95%の酸化を防いだと報告しています。また、白ワインにも同様な効果が見られたが、赤ワインの5倍の量が必要だったといいます。

地中海式の食事は世界の長寿食として知られますが、ここでも赤ワインが登場します。
バルセロナで開催された世界最大の心臓病会議(参加者17,000人)、欧州心臓学会(European Society of Cardiology)年次総会で、「肉は少なめ、魚と野菜が多く、オリーブ油を使い、赤ワインを飲む地中海式の食事は心臓病の予防や脳溢血、脳血栓のリスクを減少させる」とし、1日に1杯の赤ワインの摂取は、心臓病の発作を30%減少させると報告しています。

また、ワインが胃潰瘍の原因となるヘリコバクター・ピロリ菌を除去する働きがあることも発表されています(Epidemiology誌)。ドイツの研究者グループが、18歳から88歳までの男女1,785人を対象に調べたところ、1日1~2杯ほど飲酒をする被験者はまったく飲まない被験者に比べ胃の中のピロリ菌が存在しにくく、毎日ワインを飲む被験者にはピロリ菌が42%少なかったといいます。

このようにさまざまなベネフィットが期待できる飲酒ですが、一方で、世界の全死亡件数の4%がアルコールに起因した死亡であることをWHO(世界保健機構)が報告しています。これまでの研究報告から、健康に良い、適量の飲酒というのは、1日に1~2杯くらいまでといえそうです。