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「薬膳」でヘルシー生活

2012年8月24日(金)、食文化と料理講習会KKCで、「醗酵でヘルシー 薬膳料理」をテーマに、発酵食品とそれを用いた薬膳レシピの講習会が開かれました。今回はこの中から、「薬膳」と「醗酵食品」の効用についてご紹介いたします。

毎食を薬膳に

講習会の講師には、料理研究家で中医薬膳師としても活躍する村岡奈弥氏が招かれました。
薬膳料理というと「薬っぽい、ボリュームがない、味気ない」といったイメージがあります。村岡氏はそんなイメージを覆したいと、この日は「ミニトマトの冷しパスタ」「豚肉ソテーと蒸し野菜のオリーブ味噌と豆板醤油麹だれ」「いちじくの杏仁ヨーグルトクリーム」など、薬膳というよりイタリア料理のようなメニューを紹介しました。

食事とは、私たちが毎日元気で健康に生きる力を得るためのもの。そのため、毎食が薬膳—自身の体質や体調、食材の栄養や陰陽のバランスを考慮し、足りないものを補い、不要なものを排出させる—であるべき、と村岡氏はいいます。

食物の「五味五性」「帰経」「効能」

中医学では食材に「五味五性」「帰経」「効能」があると考えています。
「五味」とは「酸・苦・甘・辛・鹹(かん/塩辛い)」、つまり食材の味や作用のことです。「五性」とは「寒・熱・温・涼・平」で、食材が臓腑(肝・心・脾・肺・腎)に与える影響のことです。

「帰経」は、食材がどの臓器にどのような影響を与えるかを関連づけた考えで、例えば、「心経」にはあずきや小麦、「肝経」にはしじみやトマトといったように、食材ごとに影響や効果の現れ方が異なるとしています。

ちなみに、生姜には「胃腸を温める」「気血の巡りをよくする」などの働きがあります。ゾクゾクッとした冷えを感じる風邪、老廃物が体内に溜まって生じる月経痛などには、生姜が体内の気血のバランスを整えるため効果的です。

一つひとつの食材に「五味五性」があり、臓器に「帰経」することで、体のバランスが整い、体調の不具合が緩和されるというのが中医学の栄養学の基本です。

先人から脈々と受け継がれてきた食の叡智

実は、日本でも昔から「五味五性」が料理に活かされています。善哉(ぜんざい)の隠し味に塩が加えられ、佃煮や漬け物が添えられているのも、「甘」の要素が多過ぎると胃腸や膀胱を傷つけるため、あえて「鹹」の要素を加え、バランスを保っているというわけです。

ただ、「五味五性」や「帰経」のすべてが解明されているわけではありません。医学的エビデンスというよりむしろ統計的なものであるといえます。これらは、先人から脈々と受け継がれてきた食の叡智ですが、ふだんの食生活に取り入れることで、食は豊かになり、健康作りにも役立つと村岡氏はいいます。

醗酵食品で排泄機能を高める

今回、講習会でのメイン食材は味噌と麹、デザートのヨーグルトで、いずれも話題の発酵食品です。これらの食品は、栄養の吸収や排泄に関わるさまざまな酵素を多く含み、五臓の働きを高めます。

中医学では、「健康とは、気の巡りが良いこと」であり、気血の停滞は不調の原因と考えています。発酵食品はまさに気血の「巡り」を良くする食材であり、薬膳の中でも非常に重要な位置を占めています。

醗酵食品、それぞれ異なる影響や効能

味噌には「甘と鹹」の性味と「温」の性質があり、「脾・胃・腎」に働きかけます。効能としては、体を温める「温中」、不要なものを降ろす「降気」「解毒」などがあります。

麹には「辛甘」の性味と「温」の性質があり、「脾・腎」に働きかけます。効能は、消化を促進させる「消食」、気の巡りを良くする「理気」、下痢を止める「止瀉」などです。

また、ヨーグルトには「甘酸」の性味と「平」の性質があり、「肺・脾・肝」に働きかけます。効能は、陰の性質を補う「補陰」、体内の乾きを癒す「止渇」、食欲を促進させる「開胃」、腸内を潤す「潤腸」、お通じを良くする「便通」などです。

ふだんの食事に「薬膳」の知識を取り入れる

今夏、厳しい暑さ対策に、積極的に水分を摂るよう連日報道されましたが、村岡氏の周りでは、単に水分を摂るだけでは口の渇きは収まらず、むしろ体内に水分が停滞し、むくみが気になったという人が少なくなかったといいます。

ここに「五味五性」や「帰経」の知識があると、問題の改善に役立ちます。すなわち、「甘酸/平」のヨーグルトを摂ると、渇きをいやす「止渇」効果が得られ、症状が緩和されます。

体に良いといわれるものをむやみに摂るのではなく、自身の体調や体質、食材の特徴を見極め、調理法や摂取量を考える、というのが正しい食のあり方ではないかと村岡氏はいいます。

例えば、今回の「ミニトマトの冷しパスタ」は「冷」の性質ですが、ソースを醤油や麹にすると、体を冷やし過ぎず、食欲を促し、体内に溜まりがちな不要なものを解毒します。

豚肉のソテーは、豚肉そのものに疲労回復効果や肺に潤いを与える効果がありますが、オリーブ・味噌でいただくことで、オリーブの「潤い、鎮静、消炎」といった相乗効果で、夏風邪や夏バテの防止になります。
日頃の健康管理に、薬膳の知識を取り入れ、食事を楽しみながら摂って欲しいと村岡氏はまとめました。