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腸内有用菌、腸管免疫を活性化

2012年8月19日(日)、日本科学未来館で、「免疫ふしぎ未来2012」(主催:NPO法人 日本免疫学会)が開催されました。今回のキャッチフレーズは「研究者と話そう! 探検しよう、やってみよう、免疫学!」。日本免疫学会は、約5,500名の免疫学者を擁する学術団体で、会員の学術交流や研究成果の社会還元を目的に活動しています。今回は、研究者らのトークショーの中から、「免疫のメカニズム」や「腸内細菌と免疫との関わり」についてご紹介いたします。

この数十年、免疫の研究は日進月歩

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2011年のノーベル生理学・医学賞は自然免疫と獲得免疫の研究で、3人の学者が受賞したことが話題となりました。
実は、これまでにもノーベル生理学・医学賞では免疫学の研究が多く、1901年から2011年までに、免疫学で103回、計197人が受賞しています。
つまりノーベル生理学・医学賞の15%が免疫学ということになります。

「これまで死に直結していた病気が死なない病気になる。免疫学とはそうした可能性を秘めている。病気の予防・治療に直結する免疫の研究はこの数十年でものすごいスピードで進んでいる。まさに日進月歩」。
トークショーで、東京理科大学の岸本 英博氏は、免疫学の可能性についてそのように述べました。

白血球が免疫を担当

「免疫とは私たちの体を病気から守り、病気にならないようにするシステムであり、これが免疫の最も重要な働きである」。トークショーで、理化学研究所 免疫・アレルギー科学総合研究センターの横須賀忠氏はそう述べ、免疫のメカニズムを次のようにわかりやすく解説しました。

免疫を担当する細胞は血液中にある白血球です。血液は全身を巡り、白血球が全身の至るところで免疫の役割を果たします。白血球がとくに多く集まっているのがリンパ節と脾臓です。

ウイルスや細菌は食べ物や空気を介して常に人体に入ってきますが、皮膚や食道、腸、口、鼻、肺などに侵入してきたウイルスをその場で退治するのが白血球の役目です。

白血球の中のマクロファージや好中球、ナチュラルキラー細胞は第一防衛部隊というような働きで、体内に侵入した細菌を食べて殺します(自然免疫)。

また、白血球の仲間であるリンパ球に、キラーT細胞やB細胞があります。キラーT細胞はウイルスに感染した細胞をウイルスと一緒に殺します。またB細胞は抗体を作り、細菌毒素やウイルスから私たちの細胞を守り、第二防衛部隊といった役割を果たします(獲得免疫)。

リンパ球、一度出会った病原体を記憶

リンパ球は初めて出会った病原体の抗体を作るのに時間がかかりますが、一度出会った病原体は「記憶する」という優れた能力があります(メモリー細胞)。

このメモリー細胞により、同じ病原体が体内に侵入してもすぐにたくさんの抗体が作られ、同じ病気にかからないという免疫システムが作動します。

この免疫の作用を「免疫記憶」といいますが、これが免疫のなかでも非常に重要な役割であると横須賀氏はいいます。

私たちは普段の生活の中でいろいろな病原体に出会いますが、成長する過程でさまざまなメモリー細胞を獲得します。それにより強い免疫を持った成人になるというわけです。こうした免疫の仕組みこそが私たち人間に備わった、「自然治癒力」と呼ばれるものです。

人間は腸内に地球上で最も細菌を棲息させている宿主

ところで、この免疫システムが腸内細菌と密接に関わっているのではないか、という研究がここ数年盛んにおこなわれています。

理化学研究所 免疫・アレルギー科学総合研究センターの大野 博司氏が「腸内細菌と免疫の関わり」と題してトークショーでこのことについて報告しました。

地球上の全生物の2分の1以上が細菌であると考えられています。人間と細菌とは切っても切れない関係で、この地球上で人間は腸内に最も細菌を棲息させている宿主といわれています。

人間の体の細胞数は約60兆個ですが、大腸には数100種、100兆個以上の常在菌がいることが分かっています。

体全体の免疫細胞や抗体の60%が腸管に集中

また、腸には独自のリンパ球や免疫細胞が多数存在していることが明らかとなっています。大量の食品とそれに付着したさまざまな菌を取り込む腸管には、有害な異物が侵入する危険性が非常に高いため、充実した免疫システムがあります。

体全体の免疫細胞や抗体の60%が腸管に集中しており、近年、人体における最大の免疫器官は腸管であるといわれるようになっていると大野氏はいいます。

腸管免疫の大きな特徴としては、人体に有害な病原菌やウイルスに対しては免疫機能が働いて排除しますが、一方で、人体に有用な腸内細菌には寛容であるということです。

そして、さらに重要なことは、この腸管独自の免疫システムは「腸内細菌がいないと働かない」ということです。

腸内の善玉菌、免疫機能全体を高める

腸内細菌には善玉、日和見、悪玉の3タイプありますが、腸管免疫は善玉も悪玉も判断せずに腸内に細菌を共生させ、こうした細菌により、腸管免疫が刺激されています。

腸管免疫の機能は個人差が大きいのですが、これは腸内細菌叢の差と考えられています。善玉菌として知られるビフィズス菌は腸内の環境を整え、腸管免疫を活性化し、免疫機能全体を高めます。

そのメカニズムは充分に解明されているわけではないが、それでも腸管免疫を左右する腸内細菌の状態を整えることは非常に重要であることは間違いないと大野氏はいいます。

腸内細菌の中でも善玉菌は加齢とともに減少することが分かっています。良い腸内環境とは、充分な善玉菌が棲みついている状態で、そうした状態であれば腸管免疫が活性化し、さらに善玉菌も増加するというプラスの循環が生じます。

大野氏は、腸と腸内細菌、免疫の関係を頭に入れ、生活の中でお腹の状態を整えることで、免疫の強化につながると締めくくりました。