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夏場の食中毒を乗り切る知恵

6月から7月、8月にかけては湿度や気温が高くなり、細菌やウイルスが繁殖しやすくなります。食中毒の80~90%は細菌やウイルスによるものといわれています。今回は夏場の食中毒の予防法についてご紹介いたします。

2012年7月1日より牛肝臓の生肉の販売・提供が禁止

2012年7月1日より、食品衛生法に基づき、店頭や料理店での生の牛レバーの販売・提供が禁止されることになりました。牛肝臓の生食で、腸管出血性大腸菌による食中毒が生じる恐れがあるためです。加熱したレバーの販売・提供は問題ありませんが、長らく日本の食文化として親しまれてきたレバ刺しなどの料理がメニューから消えることになります。

肉の生食による食中毒事件については、2011年4月、富山県の飲食チェーン店でユッケ(生食用食肉)を提供し、4人が死亡、24人が重症となるなどの被害が出ています。

厚生労働省によると、生食用の牛肝臓などが原因と考えられる食中毒は1998年から2011年までに128件(患者数852人)発生しており、うち22件(患者数79人)は、腸管出血性大腸菌が原因といいます。そのため、2011年7月に提供の自粛を要請しましたが、その後も食中毒の事例が報告されていることから、今回のような厳しい措置となりました。

腸管出血性大腸菌、75℃で1分以上加熱すれば死滅

腸管出血性大腸菌の代表的なものにO-157があります。O-157は1975年に米国ペンシルバニアの50歳の女性が急性の下痢を起こしたことから知られるようになります。もともと大腸菌は腸内に棲息していますが、病原性がゼロというわけではなく、突然O-157のように毒素を作る能力を身につけたものが現れたと考えられています。

1982年にも、米国オレゴン州やミシガン州で、40数名が食中毒になり、そのうちの7割が血液性の下痢を起こし、O-157が検出されています。この時は、ハンバーガーが原因食と考えられ、牛のひき肉が問題視されました。

日本でも、1996年に大阪府堺市で、小学校の学校給食から10,000人以上がO-157に感染し、児童3名が亡くなるという痛ましい事故が起きています。日本では、この年、腸管出血性大腸菌は伝染病に指定されています。

腸管出血性大腸菌に感染すると、1~10日の潜伏期間後、初期感冒のような症状を発し、その後、激しい腹痛や血便を伴います。感染による発熱は比較的少ないものの、重症の場合は溶血性尿毒性症候群を併発し、意識障害や死に至ることがあるといわれています。

対策としては、腸管出血性大腸菌は加熱や消毒処理に弱いため、食肉であればまず中心部までよく加熱することです。75℃で1分以上が目安です。また、野菜はよく洗うことが大切です。

なぜ、園児はO-157の感染を免れたのか

ところで、日本では1984年にも東京都内の小学生がO-157に感染していることが報告されています。また、1990年10月にも埼玉県の幼稚園で井戸水による集団感染が起きています。この時、園児182人中の発症率は81.9%で、10人中2人が発症しませんでした。

なぜ埼玉県の幼稚園児の2割が感染を免れたのでしょうか。また、堺市の集団発生でも発症しなかった児童もいます。これを、「腸内のビフィズス菌による影響ではなかったか」と、O-157騒動の最中、1997年7月13日、徳間ホール(東京都港区)で開催されたシンポジウムで、腸内細菌研究の第一人者として知られる光岡知足氏(東京大学名誉教授)が指摘しています。

腸内には100種類、100兆個のバクテリアが棲息しています。それらは、善玉と悪玉に分かれ、そのバランスの上で健康が保たれています。ビフィズス菌は善玉菌の代表格で腸内の有害物質を体外に排出し、免疫力を高めるとされています。

堺市の児童でO-157の感染者と非感染者とを比べたところ、感染者は下痢も便秘もよくするという結果が出ています。一方、非感染者は便秘だけ、下痢だけというものでした。「下痢も便秘もどちらもよくするというのは腸内細菌が非常に不安定だといえます。不安定ということはビフィズス菌が少ないということです」と光岡氏は指摘しています。そのため、ビフィズス菌など腸内の有用菌を増やす食品を積極的に摂ることがO-157対策に効果的であるとしています。

食品由来よりもヒト由来のサルモネラ菌に注意

腸管出血性大腸菌は食品由来ですが、食中毒にはヒト由来のものもあり、こちらは食品の製造過程における企業のサーベイランス(調査監視)が求められています。

2012年5月24日(木)、東京ビッグサイトでifiaJAPAN2012が開催され、企業セミナーで「サルモネラ食中毒のリスク低減のために~国内外の事例から」と題して、平井 誠氏(財団法人 東京顕微鏡院食品安全サポート部)が講演しました。

ヒト由来のサルモネラ検出数は2009年以降横ばいですが、毎年800件近くが検出されているといいます。食中毒統計ではサルモネラ食中毒患者数は、食品由来食中毒患者数のわずか2%に過ぎないとされていますが(食品安全委員会)、食品由来よりもヒト由来のサルモネラ菌のほうを注意しなければならないと 平井氏は指摘します。

サルモネラは肉類や卵などに付着している細菌で、加熱が不十分な場合、腹痛、下痢、発熱(38~40℃)、嘔吐、頭痛などを発症します。厚労省の「食中毒菌汚染実態調査」によると、サルモネラ属菌の陽性率が高い食材は鶏ミンチ肉(55.3%、2011年)、鶏たたき(30.0%、2011年)で、牛や豚に比べると鶏肉、とくにミンチやたたきに多いようです。

ただ、平井氏によると、サルモネラ食中毒の原因となる食品はさまざまで、特定の食品に注意を払えば良いということではないといいます。例えば2008年では、サルモネラ食中毒の原因となった食品は仕出し弁当、魚介刺身、エビグラタン、弁当、肉類の加工品、ちらし寿司、スクランブルエッグ、シュークリームなど多岐に渡り、ある特定の食材だけへの注意喚起では不十分といいます。

HACCPやISO、求められる食品事業者の衛生管理体制

サルモネラ食中毒のリスク低減のためには、食品事業者の一層の衛生管理体制が求められます。食品の安全管理を確実なものとするために、HACCPやISOなどのシステムを導入することが必要と平井氏はいいます。

HACCPは、絶対に食中毒が起きてはならない宇宙食の衛生管理方式としてNASAで考案されたもので、1993年以降、国際的な衛生管理システムとして、世界中へ波及していきました。

それまでの方式では、最終製品の抜取検査のみでしたが、HACCPでは全ての製造過程、原料から最終製品までの工程を検査対象としています。加熱工程では食中毒菌の死滅の監視、また金属探知工程では金属異物の混入の可能性がある製品の排除など、集中的・重点的に連続して監視します。もちろん、工場内の整理整頓、清掃洗浄、害中対策などの衛生管理も徹底します。

HACCPについては、大和薬品でも2003年に自社工場(つくば工場)で導入しています。また、2002年12月には、つくば工場・研究室と東京本社の全部門で、ISO9001(国際品質マネジメントシステム)認証を取得しています。