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「早寝早起き朝ごはん」のススメ

昔から、健康のためには「早寝早起き朝ごはん」とよくいわれます。私たちの身体には体内時計という生体リズムが存在し、健康や長寿に影響しているといわれます。こうした体内時計に従った食事の摂り方は「時間栄養学」と呼ばれ、心身の不調和の改善で注目されています。今回は、体内時計にまつわる食事と健康の関係についてご紹介します。

体内時計の乱れ、うつ病など精神活動の低下を招く一因に

朝食をきちんと摂る学生は学業成績が良い—。
朝食を欠食するとメタボリックシンドロームになりやすい—。
こんな話をよく耳にしますが、実は、こうしたことは私たちの体内時計に基づく「時間栄養学」により明らかになりつつあります。

体内時計には以下のようなものがあります。(※サーカは、ラテン語で”約”の意)

1)ウルトラサーカディアンリズム~90分周期で、睡眠と覚醒に関わる。
2)サーカディアンリズム~1日を約24時間周期にする日内リズム。
3)サーカルーナリズム~1ケ月を刻み、女性の生理周期に関わる。
4)サーカアニュアルリズム~1年を刻み、多くの動物の繁殖に関わる。

この中で、とくに 2)の日内リズムと食事の時間との関係が私たちの健康に影響をおよぼすとされています。

例えば、深夜のトラック運転手など、夜間勤務者の夜食回数とメタボリックシンドロームの発症など、体内時計の乱れと健康の関係が明らかになりつつあります。また、とかく現代人は、生活主体が夜へと傾きがちですが、体内時計のリズムの乱れはうつ病など精神活動の低下を招く一因となることも指摘されています。

「早寝早起き朝ごはん」、現代人の体内時計を整える

朝日を浴びるととても爽快で、1日のやる気にスイッチが入ります。まさに日内リズムが発動した瞬間といえます。

体内時計がONになるのは視覚刺激や心臓などの臓器からの刺激です。
1997年、私たちの身体に時計遺伝子というものが存在することが分かりました。それまで、視神経の交叉部位(視交叉上核)に体内リズムを司る体内時計の中枢があることが分かっていましたが、大脳皮質や肺、肝臓、腎臓、心臓、さらに末梢の臓器にも時計遺伝子が発現していることが明らかになりました。

体内時計の中でも、とくに約24時間周期の日内リズムは、私たちの身体活動において、体温やホルモン分泌量の調整、消化・代謝活動、心臓・血管運動、免疫調整などを司ります。

こうした体内時計の研究から、薬をいつ飲んだら有効かということも類推できるようになりました。例えば、コレステロール合成酵素は夜間に合成能を高めるため、高脂血症の人は夜に薬を服用したほうが効果的というわけです。

食事についても同様で、健康のために「何を、食べたらいいか」だけでなく、「いつ、食べたらいいか」も重要であると、体内時計に基づく「時間栄養学」が注目されるようになりました。

また一方で、体内時計の乱れを規則正しい起床就寝や食事で調整できないかということも考えられるようになりました。
そこで、着目されたのが「早寝早起き朝ごはん」というわけです。さまざまな実験データから、そうした習慣付けが現代人の乱れた体内時計を修正し、心身の不調和を整え、メタボリックシンドロームや生活習慣病の予防に繋がることが明らかになりつつあります。

朝食については、午前中は「排泄」を重視し、むしろ摂らないほうが良いという説がありますが、「時間栄養学」では、体内時計のスムーズな発動やブドウ糖をエネルギー源とする脳の働きを活発化するためには、朝食をきちんと摂ったほうが良いとしています。

起床後、視覚と摂食の2つの経路から体内時計にスイッチ

体内時計と「時間栄養学」についてもう少し詳しくご紹介します。
2011年1月29日(土)、花王ホール(東京都)で開催された「第13回脂質栄養シンポジウム」で、早稲田大学の柴田重信教授(先進理工学部 電気・情報生命工学科)が「時計遺伝子と食事リズム」と題して最新の研究報告を行いました。

この中で、柴田教授は体内時計に関わる2つの経路について説明しました。
まず、朝起きて、太陽の光を浴びると目を通して脳の視床下部の視交叉上核が刺激され、体内時計にスイッチが入ります。もう一つは、摂食による末梢の臓器刺激でスイッチが入ります。この2つの経路にある時計遺伝子の発現で、体内時計による生体リズムの周期が作られるといいます。

時計遺伝子はほぼ全ての細胞に存在し、肝臓で脂質代謝の調整、筋肉でエネルギー代謝の調整、脂肪細胞でホルモンの分泌調整などに関わっています。

夜型生活への移行、代謝異常から肥満や糖尿病に

時計遺伝子は代謝に関わる遺伝子に影響を与えることから、食事の時間が不規則になり、体内時計が乱れると、肥満や生活習慣病に繋がることが考えられます。

朝食は時計遺伝子に影響を与える重要なもので、7時に起床、朝食で1日をスタートさせるのと、11時に起床して朝食では、生体リズムや健康状態に違いが出ると柴田教授はいいます。

また、何かを口にしただけでも、体内時計にスイッチは入りますが、バランスの良い食事を摂った場合とでは代謝の動態が大きく異なり、日内リズムはスムーズな状態ではないといいます。

ある調査で、23時に就寝する人が1970年は約7割でしたが、2005年には約4割と、年々夜型の生活者が増え、21時以降に夕食を摂る人が増えていることが分かりました。
1970年というと、その頃から自動車が急速に普及し、運動不足から糖尿病の発症者の増加が指摘されますが、夜遅い不規則な食事で体内時計が乱れ、代謝異常から糖尿病の発症が増えたことも考えられています。

米国でも、朝食欠食者は朝食を摂る人に比べ5倍も太りやすいという報告があります。原因として、昼・夜の食事の増加と血糖値の上昇が挙げられますが、朝食欠食で時計遺伝子が飢餓のリスクを感じ、脂肪の合成能が高まることが指摘されています。

体内時計を調整し、時差ボケを緩和

なにかと現代人は体内時計を乱しがちですが、「早寝早起き朝ごはん」といった規則正しい生活による体内時計のリセット実験も試みられています。

この実験から、体内時計が乱れた動物で絶食時間が長いと、体内時計の調整が難しいことが分かっています。また、食事量が多いことや糖質とタンパク質をバランスよく摂ったほうがリセットしやすいことも明らかになっています。
研究により、人とほとんどの哺乳類との間で時計遺伝子の発現に差がないことが分かっています。

柴田教授らは、食事時間の調整による時差ボケ緩和の実験も行っています。
ハワイへの旅行者が、3日前からハワイ時間に合わせて食事を摂ったところ、時差ボケによる睡眠障害が軽減したという報告が多く寄せられたといいます。

また現在、昼型の生活者と夜型の生活者の健康への比較研究を体内時計の側面から行っているといいます。例えば、悪玉コレステロールの中でも、超悪玉といわれるsdLDLコレステロールが多い人は、夜遅く食べ、そのまま寝るなど食事や睡眠のスタイルが似る傾向にあります。そうしたことから、体内時計がsdLDLコレステロールの増加に関わっていることが考えられています。

これまでの研究から、体内時計と代謝系が深く関わり、生活習慣病の発症や精神活動に影響していることが明らかになりつつあります。
朝日とともに起き、食事を摂り、日暮れとともに就寝する–。太古より人に存在した体内時計のリズムに従った生き方を、現代人はもう一度見直す必要があるのかも知れません。

【参考文献】
『時間栄養学~時計遺伝子と食事のリズム』[監修]日本栄養・食糧学会 女子栄養大学出版部
『きちんとわかる時計遺伝子』産業技術総合研究所 著 白日社