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酵素のはたらき

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驚くべき漢方薬

伝統的な植物由来の薬剤は、日本で数世紀にわたって使用されていますが、まだ発展途上です。古典的な漢方の処方の中には、驚くほど多岐にわたる健康状態に対して効果を発揮するものがあります。日本語では「五苓散」、中国語では「Wulingsan」(五苓散)と呼ばれる処方は伝統的なもので、非常に重要な役割を果たします。この処方は、英語ではHoelen Five Heab Combination、もしくはPoria Five Combinationと呼ばれています。その伝統的な効能は、経験豊富な漢方専門家達によく知られています。五苓散の適応症には、尿量が少ない、浮腫、眼瞼の腫れ、喉の渇き、頭痛、めまいや消化器の不快感などが含まれます。五苓散は非常に安全な薬で、乳幼児や妊婦にも安全ですが、その効果は非常に強力です。現代の漢方医は、この処方が様々な不快な症状や、非常に危険な場合もある症状に対して、非常に多くのそれまで知られていなかった適応があることを発見したのです。

不快な症状には、台風の接近や、飛行機に乗ったり等、高度の高い場所にいる時に発生する急激な気圧の低下のような、気圧の変化によって生じる頭痛などがあります。台風が接近すると、天候は穏やかであっても頭痛や首の痛みを感じる人もいます。飛行機に乗ると客室内の気圧の低下によって耳に痛みを感じるような人も、この五苓散によって痛みを和らげることができます。これらの耳痛は、通常は耳道にある浮腫によって発症し、五苓散は体内のどの部位のものであっても浮腫に対して有効であると考えられます。五苓散は、特に夏にみられる胃の痛みに対しても使用できます。二日酔いや乗り物酔いによる頭痛や腹痛に対しても、五苓散は適応があります。これらの症状が浮腫やめまいを伴うのであれば、なおさら五苓散の効果が期待できます。五苓散は、妊娠によるむくみや、夏の間の過度な暑さや日焼けによる足のむくみのような腫れなど、さまざまな種類の腫れやむくみに対して適応があります。

三叉神経痛は、非常に厄介です。三叉神経痛は頭痛の中でも重症なものですが、複数の医師が、激しい痙攣性の顔痛の患者に対して五苓散を投与したところ、痛みが緩和したと報告しています。帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹の発作の後に発症することがあります。これは非常に激しい痛みを伴う場合もありますが、五苓散が効果的な場合もあります。

五苓散は、深刻で生命を脅かす症状にすら効果を発揮します。急性小児胃腸炎は、特に嘔吐または下痢が顕著な場合には、乳幼児にとっては生命を脅かす可能性があります。脱水症状は、このような状態の乳幼児を治療する医師にとって、深刻な問題です。乳児に薬を飲み込ませることは、嘔吐している場合には特に難しいため、五苓散の直腸座薬を院内で作製している病院もあります。坐剤製品で市販されているものはないからです。ある研究では、急性胃腸炎の小児71人を対象に五苓散の効果を調べたところ、結果は以下のように良好と考えられるものでした。症例の86%に即時性の効果が見られました。その他の8%で8時間以内に効果が見られ、効果が見られなかったのは6%だけでした。

腎臓障害の治療のために透析を受けている患者に対しても、五苓散の使用は有益です。多くの透析患者は、透析中や日常生活の中でも、頭痛を訴えます。頭痛に加えて、透析患者は透析不均衡症候群(一般的に省略してDDSと言われます)にも苦しんでいます。これは、神経学的徴候や間欠的血液透析中、もしくは直後の脳浮腫に起因する症状によって発生します。症状としては、悪心、筋肉のけいれん、頭痛、血圧急降下と高カリウム血症、もしくは高カリウム血症のみが見られます。高カリウム血症は、透析患者によく見られます。血液中のカリウムの非常に高いレベル(重篤な高カリウム血症)は、心臓停止や死をもたらす可能性もあります。五苓散の2回/日の服用は、安全にカリウムのレベルを下げる、血圧を維持する、不均衡症候群を予防することが発見されています。

血栓や脳腫瘍から脳浮腫が発生します。五苓散は、腫瘍や血栓による頭蓋骨内圧を低減します。血栓は、脳梗塞や脳卒中の急性期に発生しますが、頭部への衝撃、いわゆる硬膜下血腫の影響によって発生する可能性があります。これらの症状の全てに対して、五苓散は頭蓋内圧を緩和する効果を発揮することが明らかになっています。脳スキャンでは、硬膜下血腫の劇的な収縮によって頭蓋骨内圧が下がり、治癒が加速したことが示されています。これによって、血腫を除去する脳手術を回避できる場合もあると考えられるのです。

脳腫瘍は、様々な種類の不調から発生します。アクアポリン4と呼ばれる脳の蛋白質の不調によって、血液脳関門を介した流体の流れに障害が発生します。アクアポリン4は、脳の内外における水分の輸送に重要な機能的役割を果たすと推定されています。脳浮腫の生理病理学では、アクアポリン4に関連する強力なエビデンスがあり、また、五苓散の研究では、アクアポリン4の障害による脳浮腫を五苓散が軽減することが明らかになりました。アクアポリン4は、アルツハイマー病等の疾患において機能を発揮します。外傷性脳損傷や脳卒中に対する病理学的反応に対しても効果的である可能性があります。

五苓散は紀元後3世紀から使用されている安全で有用な薬品です。五苓散は、製薬医学ではなかなか解決することができない医療の問題だけでなく、一般的に見られる症状の治療に対しても、安全で効果的な治療方法として、現代医学でその価値が証明されているのです。今後のさらなる発見が期待されます。

プロフィール
Dan Kenner, Ph.D., L.Ac.

Acupuncture and Integrative Medical College
(AIMC Berkeley)

Dan Kenner, Ph.D., L.Ac.

1979年に明治東洋医学院専門学校(日本)を卒業後に鍼灸師の国家試験に合格。大阪医科大学ペインクリニックおよび近畿大学医学部付属病院で研修を受ける。National University of Naturopathic Medical Sciences(米国)で自然療法医療科学(ナチュロパシー)のPh.D.を取得。現在、NHF(米国国民保険連合)およびBarkeley鍼灸統合医療専門職大学院(米国)において委員を務め、多くの著書がある。

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