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現代医学におけるエッセンシャルオイル

米国では、コロンブスはインドへの新しい貿易ルートを見つけるという使命を負って旅立ち、1492年に新世界を「発見」したと、私達は学校で教えられました。若く学生だったころ、インドへのより短い貿易ルートを見つけるという使命の目的は、「東洋のスパイス」を効率的に手に入れるためであると教えられていました。私は、なぜ「東洋のスパイス」がそれほど重要なのだろうと不思議に思いました。食品に味付けするだけのためのスパイスを手に入れることはそれほどまでに必要不可欠だったのでしょうか?500年前は黒コショウ、シナモン、クローブ、ナツメグのようなスパイスは非常に価値が高かったため、国が膨大な費用を投資して、広大な海を航海してスパイスが豊富な東洋への新しい航路を発見しようとしたのです。つまり、中東や北アフリカの中間商人から購入することなく直接スパイスを入手できるようにしようとしました。これらの中間商人は、スパイスの購入ルートを独占的に管理することによって大きな富を築いていたのです。スパイスは、食品に味付けするために大切ですが、それだけではなく医薬品や香水を作ったり、腐敗防止、特に肉の保存に大きな役割を果たしていました。黒コショウと唐辛子のエッセンシャルオイルは、文字通り「死」を「生」に変える、つまり生肉を保存食品にしてソーセージをつくるような強力な抗酸化作用があるのです。これらの保存食品にはプランタルム菌のようなプロバイオティクス乳酸菌が豊富で、しかも時間がたつとともに乳酸菌は増えてゆくのです。これらのスパイスのエッセンシャルオイルは、腐りやすい食肉から健康的な食品をつくり、文字通り「死」を「生」に変えるのです。

エッセンシャルオイルは、数千年間にわたって治療のために使用されています。エッセンシャルオイルは、芳香植物エッセンスとも呼ばれますが、「アロマセラピー」という言葉はこれが由来になっています。古代では、宗教的な儀式や個々の精神療法のためにエッセンシャルオイルが使用されました。消毒剤や他の治療を目的としたエッセンシャルオイルの活用は、古代エジプトで、そして後にはギリシアやヘブライで知られていました。聖書の中には188箇所ものエッセンシャルオイルについての記述があり、最もよく知られているものは、東方の三博士が誕生したばかりのイエスを訪問した際に送ったフランキンセンスとミルラです。

「マルセイユ酢」または「フォーシーブス(泥棒酢)」として知られる調合について、興味深いエッセンシャルオイルにまつわる逸話があります。1630年頃、フランスのテュールーズでペストが大流行した際に、ペスト犠牲者の所持品を盗んで回った泥棒達の一団が逮捕され、死刑を宣告されました。ペストは病原性が高く致命的であるにも関わらず、泥棒たちがペストの感染をあまりに恐れていないことに裁判官達は驚愕しました。泥棒達は、腐敗した死体に直接触れることを恐れなかった理由を話せば釈放すると言われました。泥棒達は、感染を防ぐための秘密の薬の処方があることを話しました。

泥棒達が使用していた薬の処方について、様々な方法が推測されました。1910年に雑誌『サイエンティフィックアメリカン』誌で紹介された処方では、乾燥ローズマリー上層部、乾燥したセージの花、生のヘンルーダ、カンファ―(樟脳)、スピリッツ(おそらくエチルアルコール)、ニンニククローブ、酢が配合され、時々混ぜながら7~8日間抽出したものでした。「薬用酢は、マルセイユの4人の泥棒が発明し、疫病が流行している際に予防として使用することに成功した。」とこの記事には書かれています。

ペストの治療は、黒いローブ、つばの広い帽子、長いくちばしのマスクを身に着けている医師のイメージを想い起させます。これらの長いくちばしには、感染した患者と接している間に医師が吸入するための乾燥ハーブ、スパイス、エッセンシャルオイルが入っています。中世には”mountebanks”として知られる、旅をしながら人々の病気の治療をする人たちがいましたが、彼らは患者を訪れるときに吸入する芳香性のハーブのポーチを持ち歩いていました。

近年、ヨーロッパの臨床医が様々な症状に対して、内服、経口や直腸投与でエッセンシャルオイルを処方するようになってきています。エッセンシャルオイルは強力な殺菌効果だけでなく、神経系と内分泌系に強い効果があります。エッセンシャルオイルの殺菌効果は、従来の医療科学において100年以上にわたって知られてきましたが、ペニシリンに代表される抗生物質のような科学的に大きな進歩と考えられることはありませんでした。

フランスだけでも数百人の医師が、様々な病気に対してエッセンシャルオイルを内服で使用しています。これらのエッセンシャルオイルは、通常、薬局で販売されているチンキ剤や他の種類の植物由来の調製物と混合されます。細菌、ウィルス、真菌のような病原性微生物は、エッセンシャルに適応できません。そのため、微生物のエッセンシャルオイルに対する獲得抵抗性という現象は起こりえないのです。どのような場合のどのような微生物に対してであっても、エッセンシャルオイルの効果はそのまま変わることはありません。

現代のアロマテラピーの父と呼ばれる人物は、1950年代初頭にベトナム駐留フランスの外科医だった、Dr. Jean Valnetです。Dr. Jean Valnetは外科医で、Tonkin湾病院の医長でした。彼は戦場での感染症治療におけるエッセンシャルオイルの効果に感銘を受け、切断術、榴散弾傷、さまざまな種類の熱帯感染症、さらには壊疽など、軍の戦闘犠牲者の生命を脅かす深刻な負傷の治療にエッセンシャルオイルを使用し、そしてエッセンシャルオイルが期待をはるかに超えて効果を発揮することを発見しました。抗生物質は供給不足で、すぐに有効性が消失してしまいましたが、エッセンシャルオイルの効果は低下しませんでした。

中国における研究では、健康と長寿に役立つスパイスの価値が確認されています。China Kadoorie Biobankによる本研究は、中国全土の地理的に多様な10地域において2004年から2008年の間に登録した30~79歳の被験者487,375人を追跡調査したものです。1週間の内6~7日間、スパイシーな食品を食べた消費者は、週に1回未満だった被験者と比較して、がん、呼吸器疾患、虚血性心疾患による死亡を含む総死亡率の相対リスクで 14%の減少を示していたことが明らかになりました。非飲酒者では、辛い食べ物の効果がより強くみられました。

ラベンダーは、最も汎用性の高いエッセンシャルオイルの一つです。ラベンダーは、様々な細菌に対する殺菌効果があるだけでなく、優れた鎮静作用もあり、神経系を落ち着かせるために薬を有効に補完します。呼吸器系の感染症に最も効果的なエッセンシャルオイルは、タイム、ユーカリ、ニアウリ、カユプテ、ラベンサラ、ヒソップで、ラベンダーやローズマリーも効果的なことがあります。これらはすべて優れた抗ウィルス剤です。ラベンサラとタイムは、特に様々な種類のヘルペスに対して効果があります。ホルモンによく似た作用があるエッセンシャルオイルは、クラリセージのオイルです。寝汗やエストロゲンの補充にとても優れています。

エッセンシャルオイルは、米国の獣医学で使用されることが増えています。この場合のエッセンシャルオイルは、ヨーロッパにおいて人間の患者を治療するためのような方法ではあまり使用されず、抗生物質耐性の問題を解消することができる可能性が高いことから使用されています。ゲルカプセルの経口投与用のオレガノオイルは、さまざまな感染症を治療するため、広く利用されるようになりました。米国では、自然食品店や自然の薬局で購入することができます。その人気が拡大し、科学的な研究成果が蓄積されるにしたがって、これらの強力な植物由来物質の活用は、医療現場でより受け入れられるようになるでしょう。

プロフィール
Dan Kenner, Ph.D., L.Ac.

Acupuncture and Integrative Medical College
(AIMC Berkeley)

Dan Kenner, Ph.D., L.Ac.

1979年に明治東洋医学院専門学校(日本)を卒業後に鍼灸師の国家試験に合格。大阪医科大学ペインクリニックおよび近畿大学医学部付属病院で研修を受ける。National University of Naturopathic Medical Sciences(米国)で自然療法医療科学(ナチュロパシー)のPh.D.を取得。現在、NHF(米国国民保険連合)およびBarkeley鍼灸統合医療専門職大学院(米国)において委員を務め、多くの著書がある。

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