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五十煙草に百酒

禁煙・嫌煙の風潮が広まって、愛煙家にとっては肩身の狭い社会になってきました。公共施設をはじめ飲食店など、禁煙を大きく掲げるところも増えています。

企業でも社員はもちろん来客にまで禁煙をもとめているところもありますし、道路での喫煙に2000円の科料を決めている自治体もあります。いずれも、健康への悪影響がクローズアップされてきたからにほかなりません。

さて、五十煙草に百酒なる日本の古い諺。こうした時代の現況を考えると、歴史を感じます。五十煙草とは、五十歳くらいになったら、血圧が上がったり体調が衰えたりするから、タバコは控えめにした方がいい、と言った意味。

逆に、百酒は、適量であれば体にいいから百歳くらいまで大丈夫、というもの。二つの嗜好品についてのこの見解、現代風に解釈するのも興味があります。

タバコの三悪人

タバコは、南アメリカ原産のナス科の植物ですが、コロンブスが中央アメリカからヨーロッパに持ち帰った、という話はよく聞きます。日本には慶長年間に南蛮船によって伝えられたといわれます。

タバコが健康を損ねる元凶のようにいわれるのは、煙の中に数千種類もの化学物質を含み、なかでも200以上が有害物質であるからです。その中でも、とくに悪質なのが、ニコチン、タール、一酸化炭素の「三悪人」です。

ニコチンは、依存性物質といわれますが、血管を収縮させて老化を早めたり、心臓に負担をかけたりします。タールは、発がん物質を含んでいます。その数、およそ40種類。タバコとがんの因果関係はこのタールがあります。

一酸化酸素は、血中のヘモグロビンと結合して酸欠状態にさせるほか、血管内皮を損傷して動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こす原因となります。

タバコの害については、喫煙者本人だけではなく、受動喫煙、いわゆる副流煙の影響も問題となっています。

がんの元凶

タバコといえば、がん。これについては、多くの研究がされていますが、厚生労働省が全国の4万人以上を対象に10年間にわたって実施した追跡調査によれば、タバコを吸う人の死亡率は、ガンで男性が1.6倍、女性は1.8倍。循環器の疾患では、男性1.4倍で女性は2.7倍。どちらも女性のほうが高くなっています。

この調査では、二つの注目すべき見解を示しています。
一つは、以前喫煙していて禁煙をした人は、最初から吸わなかった人と同じくらいの死亡率であった。

二つ目は、10年間に亡くなった人のうち20%以上は、タバコをやめていれば死亡しなかった。二つとも、禁煙の有効性を強調しています。主任研究者は、禁煙に「もう遅いということはない」とも述べています。

タバコとがんについては、1966年から1982年にかけて実施したある調査によると、咽頭がんの95%以上、肺がんの約70%、食道がんの約50%、肝がん・すい臓がんの約30%の原因が喫煙となっています。

このほかにも、末梢血管疾患(約65%)、肺気腫(約50%)、くも膜下出血(約40%)なども喫煙と大きく関わっていると報告しています。

夏目漱石も北原白秋も

健康を配慮して禁煙する人も増えています。日本たばこ産業(日本専売公社)の調査によれば、わが国の成人喫煙率は、昭和40年に男子82.3%、女子15.7%だったのが、平成21年には、それぞれ38.9%、11.9%まで低下しています。

男女ともに、年ごとに低減していますが、男子の場合、平成14年に50%を切り、20年に40%を切っています。男子の38.9%を年代別に見ると、60歳以上が27.8%と低いのに対して他の年代は軒並み40%以上となっています。30~50代は、45%近くもあります。

さて、タバコを吸えばみんながんになって早死にする、と考えるのは早計でしょう。著名人の中に愛煙家は多くいますが、天寿を全うした人ももちろんいます。

夏目漱石は、晩年胃潰瘍に悩まされて49歳で没。北原白秋は、糖尿病と腎臓病に苦しみながら57歳で没。煙管愛好者の幸田露伴は80歳、同じく小泉八雲は54歳でこの世を去っています。葉巻党の吉田茂(89歳)とチャーチル(91歳)は、いまの平均年齢をさえ超えています。

映画監督の小津安二郎も、愛煙家(酒飲み)として有名で、「酒とタバコ、どちらかをよせといわれたら、酒をよす」という言葉を残しています。

タバコの効用

一本でレモン半分から一個分のビタミンCが失われるといわれ、すっかり悪者扱いのタバコですが、喫煙の効用はあるのでしょうか。

健康的には、まず考えられないと思いますが、精神的に敢えて探せば、休息や仕事の区切りをつけるきっかけになること、気持をリラックスさせて、不安やイライラを解消させる

こと、などが考えられます。しかし、これらは他の方法でもできそうです。

百薬の長

一方の酒です。タバコが、いかにナス科の植物とはいえ、人間にとって食経験がないうえに、得体の知れない葉っぱを乾かして燃やして煙を吸う、という異常な行為であるのに対して、酒は、殆どの場合米や麦、芋、葡萄などといった古くからの食材を原料とし、しかも発酵させるものさえある。

ここに、大きな違いがあります。健康にとって善い・悪いの分かれ目です。酒は、人類の歴史とともにあり、常に生活に密着して冠婚葬祭や人生の節目に存在してきました。コミュニケーションを深め、人間関係を円滑に保つためにも、大きな役割を果たしています。

酒で気分転換

酒は、精神的にどんな効用があるのでしょうか。まず、量を弁えての上ですが、ストレスの緩和が考えられます。ほどよいアルコールの力で、気分転換をすれば、気分はすっきりするでしょう。

また、考えに行き詰ったときには、発想の転換にも役立ちます。ふだん思いつかないアイデアが浮かんだり、発想を変えることができるのも、飲んだとき、ということは多く人が経験しています。

体にいい酒

酒の身体的効用についても、いろいろいわれています。まず、よくいわれるのが、血管を拡張して血行をよくすること。ほかにも、食欲の増進、利尿作用による老廃物の排出、心臓など循環器疾患の発病抑制など。

循環器疾患については、アルコールが悪玉コレステロールを抑えて、心臓病を防ぐ善玉のコレステロールを増やす働きがあるからといわれています。

また、適量の酒を飲んでいる人は、まったく飲まない人や大量に飲む人に比べて死亡率が低い、という研究結果も発表されています。

飲酒が体にいいことは明らかですが、これも適量を守ってのこと。過度の飲酒は、肝臓に負担をかけるだけでなく、高カロリーの摂取につながることを肝に銘じるべきです。