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三里四方のものを食べろ

食べ物に、季節も国境もなくなりました。私たちは、日本のどこにいても、いつでも、国内だけでなく世界中でとれた食料を手に入れることができます。

日本で最も多くの魚が「陸揚げ」される港は成田空港である、などという笑い話もあるほどです。食卓の料理に、その材料の生産国の国旗を立てたら、オリンピック会場か国連ビルのようになってしまうでしょう。

こうした便利さを享受する前に、食べるという、生きていく上での基本をもう一度原点に戻って考える必要があります。飽食の時代に生きる私たちは、食事と健康について栄養学を踏まえて考えたいものです。

日本人は定住民族

民族を農耕と狩猟に分けると、元来日本人は農耕民族であり、一方、欧米人は狩猟民族である、とよく言われています。同じところに居を構え、狭い土地を耕して作物を作り、それを食する。

土地に対する執着は、狩猟民族に比ではないでしょう。しかし、農耕だけでなく、近くで動物や魚を獲って食していたことも十分想像がつきます。

日本人を定住民族と定義する根拠は、ここにあります。いずれにしても、生活は、まさに自給自足そのもの。地産池消の原点もそこにあります。農薬も化学肥料もなく、やせた土地で育った農作物は、新鮮なことはもちろん、安全で栄養価も高かったことでしょう。

医食同源

中国で古くから伝わる「医食同源」という言葉。病気の治療も日常の食事も、どちらも人間の生命を養い健康を維持するためのもので、その源は同じであるという考えで、食事と健康との関係を言い表しています。

「身土不二」(しんどふに)という考えもあります。人と土(環境)は一体であって、切っても切り離せないものであるという、もともと仏教用語ですが、これら二つの言葉から、「住んでいる土地の、それぞれの季節に収穫した旬のものを食べる」という食生活の知恵がうかがえます。

そして、これは今回のテーマである「三里四方のもの(季節の野菜)を食べろ」に相通じます。身土不二の考えは、多くの学者や研究者などに多大な影響を与え、日本の農業やマクロビオティックなどに反映されています。

郷土料理、おふくろの味

近ごろは、弁当を作って持参するサラリーマンが急増しているそうです。食費を削りたいとう経済的な理由だけでなく、自分で作る喜びや健康志向などが表われているようです。

自作の弁当を持参する独身サラリーマンを、ほとんどの女性が好意的に見ているという調査結果もあります。男子厨房に入らず、という言葉は、死語になったのでしょうか。そういえば、中高年男性を対象にした料理教室もたいへんな人気と聞きます。

弁当人気は、ある意味おふくろの味、郷土料理への憧れともいえます。郷土料理の店が連日込み合ったり、居酒屋メニューのおふくろの味が評判だったりするのも、郷愁感の表れともいえましょう。

インターネットで人気のおふくろの味を検索すると、みそ汁、切り干し大根、きんぴらごぼう、ひじきの煮物、肉じゃが、サバの味噌煮、かぼちゃの煮物、などのなつかしい料理が列挙されています。

地方に古くから伝わる冠婚葬祭の料理も、生活習慣病予防などの健康志向の意味から注目されています。長野県の山村に伝わる料理が長寿の秘訣であるとして雑誌に取り上げられたこともあります。

地元の野菜や淡水魚、豆腐、胡桃の実、寒天など、まさに健康食品のオンパレード。しかも、添加物なし。この手作り料理が、体に悪いわけがありません。

同じ顔をしているのに

野菜などが一年中食べられることは、ある意味人間から我慢を取ってしまったともいえます。季節感や旬をなくしてしまったことも、喜べない真実です。

しかし、忘れてはいけない大きな問題があります。日本の野菜の、味と栄養価の低下です。新聞は、ほうれん草に含まれるビタミンCが20年前の半分に落ち込んだことを報じました。

「四訂日本食品標準成分表」(1982年発行)では、ほうれん草のビタミンCは65mgとなっていますが、「五訂」(2000年発行)を見ると、それが35mgと、なるほど半減しています。

同じように、小松菜を見ても、75mgから39mgと、同様の結果が見られます。見ただけではまったくわかりませんが、成分が激減していることは、栄養学から考えても大問題です。農薬や肥料の問題、大量生産、促成栽培など、農作物の作り方が昔とかわってしまったからでしょうか。これは、あくまで国産の野菜を比べていますが、輸入品については、もっとひどい数値かもしれません。

冬のきゅうり、夏のほうれん草

我慢を忘れた私たちは、欲望の限りをつくして品物を求め、生産者や流通業者はそれに応え、あるいは先取りすることに躍起になります。旬の喪失は、その副作用です。夏の商品であったアイスクリームを暖房の効いた部屋で味わう快感を経験し、いまでは冬のスイカに違和感を持たなくなりました。

きゅうりもトマトもほうれん草も、一年中手に入ります。しかし、これらは元来季節商品です。きゅうりやトマトは夏、ほうれん草は冬の野菜だったはずです。ここでも、栄養価が問題になります。

「五訂日本食品標準成分表」によれば、ほうれん草に含まれるビタミンCの量は、冬と夏では3倍も開きがあります。冬採りが60mgであるのに対し、夏採りの場合は20mgしかありません。

月別に見ると、2月では73mgあるのに、7月は僅か9mgしかありません。もともと、ほうれん草は、寒さに耐え霜に当たり雪をかぶって、甘くなり美味しくなり、栄養分を蓄えるのです。暑い季節に育ったものが、美味しいわけがありません。

トマトの例をみますと、旬の7月には18mgあるのが、1月では半分の9mgしかありません。旬のものを食べるのは、栄養学的にも理にかなっているのです。季節には、それにふさわしい食材があるのです。

旬と地球温暖化

野菜や果物などの生産地をテレビで見ると、決まったように大きなビニールハウスが林立しています。農地というよりは工場群といった感じです。この中では、季節を超越した農作物を育てるために、連日連夜重油がたかれています。これが、二酸化炭素を排出します。

「露地で栽培された農作物など、旬の食べ物を旬に食べる」と、国立環境研究所が提案していますが、重油を使った促成栽培はこれとは逆の行き方です。

また、遠くでとれた食料を運ぶにも、輸送にかかる燃料が二酸化炭素を排出します。京都議定書を引き合いに出すまでもなく、二酸化炭素排出の削減は、国を挙げて進めなくてはいけない重要課題です。

重油で地球を暖めてまで、冬にメロンやサクランボやきゅうりを食べるのか。それとも、重油の消費を減らして地球温暖化の防止に貢献するのか。旬のものを食べるということは、地球温暖化の防止にも大いに役立つことを、私たちはもっと知るべきです。落語の「千両みかん」のように、本来季節はずれの食料を求めて奔走することは控えたいものです。

舶来品を食べる

地中海のマグロやノルウェーのさば、さらにはトンガのかぼちゃ、タイのアスパラなど、世界中の食料や食材が食卓を彩っています。まさに、外国を食べるといった感じです。

食料自給率の低さが話題になります。農林水産省の「食料自給表」によれば、カロリーベースで見た日本の自給率は、2006年度で39%。前年比で1%減となっています。ここ10年ほど、40%で推移しています。

この40%という数字は、先進国の中では際立って低いものです。2003年の自給率を国別に比べてみますと、下から日本(40%)、スイス(49%)、オランダ(58%)、イタリア(62%)など。逆に、100%を超えているのは、オーストラリア(237%)、カナダ(145%)、アメリカ(128%)、フランス(122%)の4カ国だけです。

日本も、1961年(昭和36年)には78%ありましたが、年々下がり続けて、1987年に50%になり、翌翌1989年(平成元年)に49%に落ちてから下降を続けています。品目別の自給率は(2005年)、小麦14%、豆類7%がとくに低いようです。野菜79%、果実41%という数字も気になります。

主な穀類の国内生産量を見てみますと、たとえば米の場合、1960年(昭和35年)は1286万トンあったものが、2007年(平成19年)には871万トンと、大きく減らしています。小麦も、同様に、153万トンから91万トンになっています。

地のもの、旬のものを食べる、三里四方のものを食べる、という健康の基本から考えると、食料自給率を上げることは焦眉の急といえましょう。

野菜の自給自足

庭やベランダで、野菜を育てるのが流行していると聞きます。テレビ番組も盛んですし、そのための本もたくさん出版されています。種まきから、あるいは苗から、成長を確かめるのも楽しみですし、収穫の喜びはもっと大きいでしょう。

農薬は使わなくてすむでしょうし、肥料なども納得して施せますから、生産者の顔が見えないということもなく、安心して食べられます。ナスやトマトやきゅうりなど、野菜の花が想像以上に美しいことにも驚くでしょう。自宅の菜園は、まさに楽しい花畑であり自給自足の場でもあります。土いじりや植物の育成は、老化防止にも役立つでしょう。

地産地消

地産地消の動きは、生産者・消費者レベルの問題ではなく、近ごろでは政府や自治体も力を入れて取り組むようになりました。給食に地元で生産された野菜を使う学校も、増えています。

地産地消の考えは世界共通で、たとえばアメリカにはCSA(Community Supported Agriculture)(地域支援農業)がありますし、イタリアでは1986年に有名なスローフード運動が始まっています。どの運動も、土地土地の食材や食文化を見直し、地のものを食べるようにし、生産者を支援し、消費者を啓蒙する、といった内容になっています。

賢く食べる

厚生労働省、農林水産省、文部科学省は、「食生活指針」を策定しています。資料では、「近年、わが国の食生活は、海外からの食料輸入の増大に加え、食の外部化や生活様式の多様化が進展し、飽食とも言われるほど豊かなものになっている中で、脂質の摂り過ぎ等の栄養バランスの偏りや、食料資源の浪費等の諸問題が顕在化しています。」と述べ、国民的な運動を展開していくとしています。
食生活指針として、以下のような内容を掲げています。

  • 食事を楽しみましょう。
  • 1日の食事のリズムから、健やかな生活のリズムを。
  • 主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。
  • ごはんなどの穀類をしっかりと。
  • 野菜・果物、牛乳・乳製品、豆類、魚なども組み合わせて。
  • 食塩や脂肪は控えめに。
  • 適正体重を知り、日々の活動に見合った食事量を。
  • 食文化や地域の産物を活かし、ときには新しい料理も。
  • 調理や保存を上手にして無駄や廃棄を少なく。
  • 自分の食生活を見直してみましょう。

私たち人間も地球にすむ生物体です。その摂理に遵うのが、生きる基本ではないでしょうか。生きる原点。食べる原点。自然の流れに逆らわず、その土地でとれたものをその季節に食べる。身の回り三里四方の地域のエネルギーを食べていれば健康が維持できる、と先人は諺で教えています。