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自然治癒力を高める東洋医学の考え方[2](インタビュー)

掲載2

癌治療における西洋医学と東洋医学の理想的な関係

中国においては、中医学理論に基づいた生薬(中医薬)療法を併用した中西医統合の癌治療法が実践され成果をあげています。癌細胞を取り除く治療には西洋医学を用い、治癒力や体力、免疫力を高めるために中医学を用いる治療法により、より効果的な癌治療とQuality of life(QOL、生命の質)の向上を実現できることが指摘されています。

日本においても、癌治療に中医薬療法を併用したり、日本で発達した漢方薬を活用する試みや研究が行われています。漢方治療は癌手術後の体力回復を促進し、抗癌剤治療や放射線治療における副作用を防止することにより、西洋医学的な癌治療を補完し、癌患者の生存率やQOLの向上に寄与することが医学論文の中で数多く報告されています。癌の再発や転移を抑制する効果も報告されています。

癌の診断や治療は、科学的根拠に基づく西洋医学を基本にすべきだと思います。しかし、癌を攻撃するだけでは限界があるのも確かです。体の治癒力や抵抗力に対する配慮が少ないという欠点もあります。西洋医学と東洋医学のそれぞれの良い点を併用していくことが、癌の集学的治療をより一層レベルの高いものにしていくために必要であると思います。

癌における疾病事情、癌予防で患者がすべきこと、など

癌による死亡を減らすための一つの手段は、癌検診によって転移の起こっていない早期の段階で見つけて癌細胞を取り除くことです。この早期発見・早期治療によって癌による死亡を減らそうという戦略を癌の第2次予防といいます。しかし、癌検診で見つかった場合でも、例えば、胃癌では5%、肺癌では25%ですでに遠隔転移(他の臓器への転移)が見つかっています。顕微鏡でしか発見できない微小な転移はもっと高頻度に起こっているはずです。

つまり、検診で見つけた段階でも、確実に治せるとは限らないのです。また、いくら早期発見・早期治療を行っても癌になる人を減らすことはできません。

そこで、癌で死亡する人の数を減らすには、癌になる人の数を減らすことが最も大切であることが認識されるようになりました。禁煙などのライフスタイルの改善や食生活の改善によって癌になる率そのものを減らすことを第1次予防といいます。この第1次予防が癌患者数の増加を食い止める根本的な解決法であることは間違いありません。癌を予防するための食品素材や健康食品の有効性に関する研究が注目されています。

しかし、現実問題として、第1次予防や2次予防を徹底しても癌の患者を減らすことには限界があります。環境中から全ての発癌物質を取り去ることは困難であり、DNAにキズをつける活性酸素は絶えず体の中で発生しています。診断のための費用や労力との兼ね合いで、早期の癌を見つける検診の有効性には限界があります。

そこで不幸にして癌に罹った人にとっては、癌死から逃れる方法が必要となっています。一旦癌を治療したあとに再発や転移を予防することを癌の第3次予防といいます。

最近では、癌が治ったあとに、二つ日の癌、三つ目の癌にかかる人が増えてきました。転移ではなく、胃癌の次に前立腺癌、その次に肺癌などといったように全く別の部位に新たな癌ができることです。一人の人に幾つもの癌に発生することを多重癌といいます。

治療方法が進んで治る癌が増えてきたことが原因の一つに挙げられるのですが、癌になる人は免疫力の衰えなど他の癌にもなるリスクも高くなっているのが一般的です。時には癌の治療(抗癌剤や放射腺照射)が新たな癌をつくり出すこともあり、これを2次癌といっています。

多重癌や2次癌を防ぐことは癌の第1次予防になるのですが、発癌リスクが高い人が対象ということで第3次予防に近い積極的な対策が必要です。

医学の進歩によって癌を取り除く治療法が進歩してくると、癌治療の宿命である再発や多重癌や2次癌の発生を予防することが癌死から免れるキーポイントとしてクローズアップされてきたのです。

癌の再発予防のためには自分でやるべき事がたくさんあるという認識を持つことが大切です。医者まかせでは癌の再発を予防することはできません。

癌の手術をしたあとは、患者さんのみならず主治医も再発が心配です。そこで、他の臓器への転移や手術後の取り残しが予想される場合には、残っている可能性のある癌細胞を抗癌剤や放射線によって殺す治療法(術後補助治療という)を行ないます。目に見えなくても、残っている可能性がある癌細胞を抗癌剤や放射線照射によって叩いておくほうが再発予防には効果があるからです。

しかし、強力な抗癌剤投与は免疫力や抵抗力を低下させることによって再発を促進する可能性も指摘されており、その手加減に関しては議論の余地があります。

癌が小さくて転移の可能がないと考えられる場合には、癌細胞を完全に切り取れば治療は終了となりますが、このような早期の癌でも再発することがあります。癌が目で見えるほど成長した段階では既に数憶個以上の癌細胞が増えていて、その一部がリンパ液や血液の流れに乗って遠くへ転移している場合があるからです。手術後に再発(転移や局所再発)が見つかれば、癌細胞を取り除く治療(手術、抗ガン剤、放射線)が再開されます。

このように、癌の治療後に転移や再発を見越した補助治療が行われていますが、医者が行えるのは薬や放射線などを使って癌細胞の増殖を抑えることが中心となります。

癌細胞を直接攻撃する治療法以外にも、癌に対する抵抗力を高めるための健康食品や自然療法や伝統医学などの活用、再発のリスクを減らすための食生活やライフスタイルの改善、心の働きで体の自然治癒力を高めるイメージ療法や精神療法など、患者自身で行える再発予防の方法がたくさんあります。このような治療法は先進国で一般的に行われている通常療法(=西洋医学)とは区別されて代替療法と呼ばれています。

代替療法の多くは医学部で教えていないこと、健康保険を使って行えないこと、臨床効果の証明がまだ十分でないこと、などの理由により医者が行うことはほとんどありません。

代替療法の中には癌の再発予防や治療に有効なものもたくさんあり、これらを適切に使用すれば、癌の再発を遅らせることも防ぐことも可能なのですが、医者が指導してくれない以上、自分で勉強して実行するしかありません。

癌の種類や進行度、体力や体質や性格、食生活や生活習慣などによって、癌再発予防のために必要な方法は患者さんそれぞれで違ってきます。癌死から逃れるためには、患者さん自身が自分の癌の再発を予防するために何をすべきかを判断できるように勉強することも必要なのです。

多くの癌患者さんが治療のあとも再発を恐れて日々を送っていますが、再発の予防を医者まかせにしたり、再発は運命だとあきらめている人も多いようです。

しかし、体には癌に対する抵抗力や自然治癒力といったいわゆる抗癌力が備わっており、この抗癌力を高める方法を活用すれば、癌の再発を自分自身の努力次第で遅らせたり防ぐこともできるのです。中高年と言われる癌年令の人は、若い人に比べて既に抗癌力はかなり低下しており、癌を発病すること自体が、体の自然治癒力や抵抗力に問題があることを意味しています。衰えている抗癌力をいかに高めるかが、再発予防のキーポイントになると言っても過言ではありません。

プロフィール
福田 一典(ふくだ かずのり)氏

銀座東京クリニック 院長

福田 一典(ふくだ かずのり)

昭和28年福岡県生まれ。昭和53年熊本大学医学部卒業。熊本大学医学部第一外科、鹿児島県出水市立病院外科勤務を経て、昭和56年から平成4年まで久留米大学医学部第一病理学教室助手。その間、北海道大学医学部第一生化学教室と米国Vermont大学医学部生化学教室に留学し、がんの分子生物学的研究を行う。
平成4年、株式会社ツムラ中央研究所部長として漢方薬理の研究に従事。平成7年、国立がんセンター研究所がん予防研究部第一次予防研究室室長として、がん予防のメカニズム、および漢方薬を用いたがん予防の研究を行う。平成10年から平成14年まで岐阜大学医学部東洋医学講座の助教授として東洋医学の教育や臨床および基礎研究に従事した。現在、銀座東京クリニック院長。

<主な著書等>
「がん予防のパラダイムシフト--現代西洋医学と東洋医学の接点--」(医薬ジャーナル社,1999年)、「からだにやさしい漢方がん治療」(主婦の友社,2001年)「見直される漢方治療~漢方で予防する肝硬変・肝臓がん」(碧天舎,2003年)など。

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