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自然治癒力を高める東洋医学の考え方[1]

掲載2

「未病を治す」は全ての病気の予防の原則

西洋医学では健康と病気を二律背反的に捉える傾向があります。つまり、病気がなければ健康、健康でなければ病気というように絶対的に評価しがちです。「病気」そのものを治療の対象と考える西洋医学では、病気と健康の間のどこかで線を引かないと治療を開始できないと考えるからです。

ところが東洋医学では、病気と健康は連続していて、病気でなくてもその健康状態は様々であることに早くから気づいていました。健康の状態には高い状態から低い状態まであって、それが低下すると病気の状態に至るという連続的な見方をしています。これは「病気」ではなく「病人」を診るという視点を重視するからです。

東洋医学が健康と病気を連続的に考える理由の一つは、物事全てを相対的に認識する中国哲学の自然観と関係がありそうです。例えば、この世に存在する全ての物質や自然現象を「陰」と「陽」に分ける考え方があります。太陽、男、昼、火、明、熱は「陽」に属し、その反対概念である月、女、夜、水、暗、寒は「陰」に属するといった具合です。性格の明るい人は陽に属し、陰気な人は陰となりますが、その評価は相対的なものであり、気持ちの明るい人でももっと陽気な人と比較した場合には、その人は陰に属してしまいます。

寒がりの人や暑がりな人、体の冷えや火照りのような症状や体質は「寒(かん)」と「熱(ねつ)」という概念で相対的に評価します。体の構成成分(気血水)や体力は「虚(きょ)」と「実(じつ)」という相対的概念で評価します。

東洋医学の治療理念は、病的状態を体全体の歪みとしてとらえ、これを全体的に補正することで成立しています。正常状態を歪みのない原点とすると、患者の病的状態を修正するのに、どちらの方向に向ければよいのかという判断が重要になってきます。したがって、病人の呈する状態がどの位置にあるかを決定して漢方薬を運用するうえで、陰陽・虚実・寒熱といった相対的な指標が役に立つのです。

さて、東洋医学では病気とはいえないが健康とも言えない半健康的な状態を「未病」ととらえ、未病の段階で体の不調を治していくのが最も良い治療法であると考えています。未病を治す東洋医学の基本は、心身全体の調和を計り、生体防御能や自然治癒力を高めることで、これは全ての病気の予防法の原則といえます。

漢方薬や健康食品が最も効果を発揮するのは、この「未病」の段階で病気を予防する場合です。加齢とともに新陳代謝や血液循環は悪くなり、抵抗力や治癒力が低下してきます。東洋医学では、気血水の量の不足や巡りの停滞を改善することが未病の治療として重視されています。

日頃から、血液循環や新陳代謝を良くし、免疫力や抗酸化力を高めるような健康食品を摂取することが病気の予防につながるのは、これらが気血水の量の不足や巡りの停滞を改善して未病を治す効果があるからです。

プロフィール
福田 一典(ふくだ かずのり)氏

銀座東京クリニック 院長

福田 一典(ふくだ かずのり)

昭和28年福岡県生まれ。昭和53年熊本大学医学部卒業。熊本大学医学部第一外科、鹿児島県出水市立病院外科勤務を経て、昭和56年から平成4年まで久留米大学医学部第一病理学教室助手。その間、北海道大学医学部第一生化学教室と米国Vermont大学医学部生化学教室に留学し、がんの分子生物学的研究を行う。
平成4年、株式会社ツムラ中央研究所部長として漢方薬理の研究に従事。平成7年、国立がんセンター研究所がん予防研究部第一次予防研究室室長として、がん予防のメカニズム、および漢方薬を用いたがん予防の研究を行う。平成10年から平成14年まで岐阜大学医学部東洋医学講座の助教授として東洋医学の教育や臨床および基礎研究に従事した。現在、銀座東京クリニック院長。

<主な著書等>
「がん予防のパラダイムシフト--現代西洋医学と東洋医学の接点--」(医薬ジャーナル社,1999年)、「からだにやさしい漢方がん治療」(主婦の友社,2001年)「見直される漢方治療~漢方で予防する肝硬変・肝臓がん」(碧天舎,2003年)など。

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