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自然治癒力を高める東洋医学の考え方[1]

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「虚を補う」視点の大切さ~老化とは「虚」に傾く過程

東洋医学では体を構成する成分を気・血・水で表現します。「気(き)」とは体を動かす生命エネルギーで、「血(けつ)」は血液や栄養素、「水(すい)」は体液のことです。この気・血・水の量的状態を「虚(きょ)」と「実(じつ)」という概念で表現します。

「虚」とは「空虚」や「虚弱」という意味であり気血水の何かが不足している状態です。「実」とは「充実」という意味で気血水の成分の何かが有り余っている状態で、量が増えている場合や、流れが悪くなって局所的に滞っている場合があります。

「虚」と「実」は体質の強弱を現す場合にも使われます。体力の余力が不足して抵抗力の低下した状態を「虚」といい、体力が有り余って病気に対する抵抗力が強力で病的反応も活発な状態が「実」です。「実」の状態なら健康そうに思えますが、「過ぎたるは及ばざるがごとし」であって、例えば肥満や高脂血症やむくみのように物が有り余っていることが悪いこともあるのです。何ごとも中庸(どちらにも片寄らないこと)が良いというのが東洋医学の健康観です。

さて、「老化」というのは、生理的に「虚」に傾く過程といえます。歳をとってくると体力も抵抗力も低下してきます。これは生命エネルギー(気)が低下し、栄養状態(血)が悪くなり、体の潤い(水)も無くなり、体の諸々の機能が徐々に低下していくからです。したがって、老化を防いだり遅らせるためには、まず「虚」という体力や機能の低下を補う治療が基本になることが理解できます。

西洋医学では作用の強力な薬が「良い薬」とされていますが、漢方ではこのような強い薬は「格が低い薬(下薬)」と位置付けられています。漢方では西洋薬のような特効的な効果はなくても、副作用がなく病める体に好ましく作用する薬、長期の服用が可能で徐々に治癒力や体力を回復させる薬を、最も格が高い「上薬」としている点に特徴があります。薬用人参のような「命を養う」ような薬を重視してきたのです。

上薬と言われる漢方薬は、現在の健康食品の原点のようなものです。作用が弱くて効果が現れるまでに時間がかかり、短期間の動物実験などでは薬効がはっきり確かめられないものも少なくありません。西洋医学の見方では薬として認められないようなもので、「漢方薬や健康食品は効かない」といわれる理由の一つにもなっているのです。

しかし、長期的に見ると難病や慢性疾患において症状の改善や延命効果など、確実な効果が経験されます。西洋医学は、「病気の原因を取り除く」という視点が重視され、「滋養強壮」や「体の治癒力を高める」という発想が乏しいのが欠点です。

一方、東洋医学の特徴は「作用が弱くて穏やかに効く滋養強壮薬」の良さを追求してきた点にあるといえます。西洋医学に滋養強壮薬のような薬が無い理由は、西洋医学では病気の原因や有り余ったものを取り除く治療が中心であって、「虚」を補うという概念が発達しなかったからです。西洋医学の医師が健康食品の意義を重視しない理由も、この点にあるのかもしれません。

プロフィール
福田 一典(ふくだ かずのり)氏

銀座東京クリニック 院長

福田 一典(ふくだ かずのり)

昭和28年福岡県生まれ。昭和53年熊本大学医学部卒業。熊本大学医学部第一外科、鹿児島県出水市立病院外科勤務を経て、昭和56年から平成4年まで久留米大学医学部第一病理学教室助手。その間、北海道大学医学部第一生化学教室と米国Vermont大学医学部生化学教室に留学し、がんの分子生物学的研究を行う。
平成4年、株式会社ツムラ中央研究所部長として漢方薬理の研究に従事。平成7年、国立がんセンター研究所がん予防研究部第一次予防研究室室長として、がん予防のメカニズム、および漢方薬を用いたがん予防の研究を行う。平成10年から平成14年まで岐阜大学医学部東洋医学講座の助教授として東洋医学の教育や臨床および基礎研究に従事した。現在、銀座東京クリニック院長。

<主な著書等>
「がん予防のパラダイムシフト--現代西洋医学と東洋医学の接点--」(医薬ジャーナル社,1999年)、「からだにやさしい漢方がん治療」(主婦の友社,2001年)「見直される漢方治療~漢方で予防する肝硬変・肝臓がん」(碧天舎,2003年)など。

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