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糖質制限食のすすめ

掲載1

なぜ糖質制限が議論されるのか

肥満や糖尿病やがんの治療に糖質制限食の効果が認められてきた

最近、糖質制限に関する一般向けの書籍が多く出版されています。その理由は、糖質の多い食事が肥満や糖尿病やメタボリック症候群や認知症やがんなど多くの病気の発生率を高めていることが明らかになったからです。そして、食事中の糖質を減らすことによってこれらの病気の発生率を減らせることが多くの臨床試験で明らかになってきました。

私はがんの予防や治療を専門にしています。がんの発生や再発の予防において、食事の内容が極めて重要であることが知られており、その知識や実践法をがん患者さんに指導しています。

この「がんと食事の関係」の研究において、近年大きな変化が起こっています。それは、今までの常識であった「肉や脂肪の多い食事ががんの発生や進行を促進する」という考え方から、「糖質の多い食事ががんの発生や進行を促進する」という意見を支持するエビデンス(証拠)が増えているのです。つまり、糖質摂取を減らすとがんの発生や再発を予防でき、進行がんでもがん細胞の増殖を遅くできるという研究結果が数多く報告されています。

糖質の多い食事は、がんだけでなく肥満や糖尿病やメタボリック症候群や認知症など様々な疾患を増やしていることも明らかになってています。 糖質を摂取するとインスリンが分泌されますが、このインスリンは脂肪の合成を増やし、肥満を起こしやすくします。インスリンの出ない食事、すなわち糖質制限食が体重の減量においてカロリー制限食よりも効果が高いことが多くの臨床試験で確認されています。 糖尿病の治療においても糖質制限食の効果が認められています。糖尿病の食事療法を言えば最近まではカロリー制限食しか認められていませんでした。しかし、糖質制限食の有用性を示す証拠が蓄積され、米国糖尿病学会の2011年のガイドラインでは、カロリー制限食と糖質制限食がともに糖尿病食事療法の選択肢として推奨されています。

特に糖類の摂取が健康に悪い

最近(2014年3月)、世界保健機関(WHO)は糖類摂取量を総エネルギー量の5%以下にすることを目標にすべきだと発表しました。肥満や糖尿病やがんや虫歯など様々な疾患が近年増えているのは、糖類摂取量の増加が原因であることが多くの疫学研究で明らかになったからです。

「糖類」というのは、グルコース(ブドウ糖)やフルクトース(果糖)などの単糖類と、蔗糖(グルコースとフルクトースが結合)などの二糖類が含まれます。これらは食品に添加されているだけでなく蜂蜜や果物にも多く含まれています。 コーラやサイダーのような清涼飲料水には1缶(350ml)に30グラム以上の糖類が入っています。リンゴ1個(可食部約300グラム)には約40g、バナナ1本(可食部約100グラム)には約15グラムの糖類が含まれています。ソースやトマトケチャップの大さじ1杯(約15グラム)には約4gの糖類が入っています。

成人の1日の平均的な摂取エネルギーを2000キロカロリーとすると、その5%というのは100キロカロリーになります。糖類1グラムは4キロカロリーですので、100キロカロリーは25gということになります。

糖類の摂取量を成人で1日25グラム以下に制限するということは、リンゴ1個やバナナ2本でこの基準量を超えてしまいます。糖入りの普通の清涼飲料水は1缶飲めばオーバーです。

米や小麦などの穀物にはデンプンとして糖質が含まれています。糖類(単糖類と二糖類)にデンプンなど体内で分解されてカロリーになる多糖類(単糖が多数結合したもの)を加えたものを糖質と言います。糖質と食物繊維(消化管で分解されないのでエネルギー源にならない)を加えたものを炭水化物と言います。

米国では肉と脂肪を減らして肥満が増えた

肥満の原因としては、以前は肉や動物性脂肪の摂り過ぎが指摘されていました。しかし最近では糖質の過剰摂取が問題視されています。米国では1970年代から肉と脂肪を減らす食事が指導され、実際に食事中の脂肪とタンパク質のカロリー比率は減少したのに肥満は2倍以上に増えています。

タンパク質と脂肪の摂取を減らすと糖質(穀物やイモ類に含まれるデンプンや砂糖など)の摂取量が増えます。糖質が消化管で分解されて吸収されるグルコース(ブドウ糖)はインスリンの分泌を刺激し、インスリンは脂肪の合成と蓄積を促進するので体脂肪が増えて肥満になります。インスリンは肥満を引き起こすホルモンなのです。

体脂肪が増えるとインスリンの効き目が弱くなる(インスリン抵抗性という)ので、さらに血中のインスリン濃度が高くなるという悪循環を形成します。高インスリン血症ががんや動脈硬化やメタボリック症候群の発症リスクを高めることは多くの研究で確かめられています。

フルクトース(果糖)は血糖やインスリン分泌を高めないのですが、肝臓で中性脂肪の合成に使用され、肥満や脂肪肝や高脂血症を引き起こしやすい糖です。トウモロコシなどのデンプンを酵素処理して生産される高フルクトース・コーンシロップは、グルコースとフルクトースの混合液でフルクトースが50%以上含まれています。フルクトースはグルコースによるインスリン分泌刺激を増強することが知られています。

米国をはじめ世界中で肥満と2型糖尿病(インスリンの分泌低下や感受性低下を原因とする糖尿病)が増えている原因として、清涼飲料水などからの高フルクトース・コーンシロップや砂糖などの糖類の摂取量の増加が指摘されています。高フルクトース・コーンシロップ(異性化液糖や果糖ぶどう糖液糖とも呼ばれる)は日本でも多くの食品に添加され、消費量が増えています。

米国疾病対策センターからの報告では、過去10年間のアメリカにおける医療費の大幅な増大は、肥満に相当な原因があることを明らかにしています。精製した糖質や砂糖たっぷりの食事を減らせば、肥満を減らせて健康状態を高め多くの病気を予防できるだけでなく、その結果として国の医療費を大きく減らすことができるのです。

このコラムでは、糖質摂取量の増加で多くの病気の発生率が増えている理由と、糖質摂取量を減らすと健康になる理由を解説していきます。

 

 

プロフィール
福田 一典(ふくだ かずのり)氏

銀座東京クリニック 院長

福田 一典(ふくだ かずのり)

昭和28年福岡県生まれ。昭和53年熊本大学医学部卒業。熊本大学医学部第一外科、鹿児島県出水市立病院外科勤務を経て、昭和56年から平成4年まで久留米大学医学部第一病理学教室助手。その間、北海道大学医学部第一生化学教室と米国Vermont大学医学部生化学教室に留学し、がんの分子生物学的研究を行う。
平成4年、株式会社ツムラ中央研究所部長として漢方薬理の研究に従事。平成7年、国立がんセンター研究所がん予防研究部第一次予防研究室室長として、がん予防のメカニズム、および漢方薬を用いたがん予防の研究を行う。平成10年から平成14年まで岐阜大学医学部東洋医学講座の助教授として東洋医学の教育や臨床および基礎研究に従事した。現在、銀座東京クリニック院長。

<主な著書等>
「がん予防のパラダイムシフト--現代西洋医学と東洋医学の接点--」(医薬ジャーナル社,1999年)、「からだにやさしい漢方がん治療」(主婦の友社,2001年)「見直される漢方治療~漢方で予防する肝硬変・肝臓がん」(碧天舎,2003年)など。

バックナンバー

糖質制限食のすすめ

・掲載12 糖質制限のための食事

・掲載11 糖質は必須栄養素ではない

・掲載10 糖質を減らすと寿命が延びる

・掲載9 糖質や甘味を減らすと食事摂取量が減る

・掲載8 糖質と甘味は中毒になる

・掲載7 糖質摂取を減らすと太りにくくなる

・掲載6 糖質を減らせば老化しにくくなる

・掲載5 糖質が増えると欧米人は肥満になり日本人は糖尿病になる

・掲載4 農耕が始まり糖質摂取量が増えた

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・掲載1 なぜ糖質制限が議論されるのか

自然治癒力を高める東洋医学の考え方[2](インタビュー)

・掲載5 癌治療におけるサプリメントと役割

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・掲載2 癌治療における西洋医学と東洋医学の理想的な関係

・掲載1 東洋医学との出会い、なぜ、癌代替医療に取り組むのか

自然治癒力を高める東洋医学の考え方[1]

・掲載6 天寿がん:体にがんがあっても天寿を全うできる

・掲載5 プラシーボ効果と心身一如:心が治癒力を左右する

・掲載4 医食同源とサプリメント:食養生に生かす機能性食品

・掲載3 病気は正気と病邪のせめぎ合い

・掲載2 「未病を治す」は全ての病気の予防の原則

・掲載1 「虚を補う」視点の大切さ~老化とは「虚」に傾く過程

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