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高齢者のグルタチオン産生を高めるために必要なαリポ酸

この連載でご説明してきましたが、炎症と酸化ストレスは、老化を早めてしまう2大要因です。炎症と酸化ストレスを除去するために、私たちは毎日の食事で十分な量の抗酸化物質を摂取して、加齢に伴う疾患を予防する必要があります。幼児・児童期、思春期、もしくは青年期などの成長期を通して人間の身体は成長を続けており、酸化ストレス、炎症やその合併症に対抗するための抗酸化物質を食品や栄養補助食品から合成する身体機能は、この時期に最も優れています。もう一つの重要な生理的機能に、酵素を媒介とした代謝機能があります。酵素経路を介した酵素は、私たちの生命を維持するために、細胞におけるすべての生化学的反応に必要です。これらの機能は加齢とともに徐々に衰えますが、特に食事が十分でなかったり、運動不足であったり、健康維持に対する取り組みが不十分な場合であればなおさらです。私たちの遺伝子は日々生化学的な活動を続けているため、遺伝子の転写も生命を維持するために重要です。病気ではない、健康な遺伝子の発現のために、遺伝子には最良の情報、つまり、適切な栄養を提供したいものです。したがって、このような加齢による不調に対抗して、疾患や障害を防ぐためにはどのような栄養素が必要であるか知っておく必要があります。

酸化ストレスや炎症を防止するとともに、酵素と遺伝経路が適切に機能するために、αリポ酸はこれらの活動に密接にかかわる分子なのです。αリポ酸は、様々な異なる種類の遺伝、酵素、細胞機能に対する効果が発見されていることから、科学界や栄養補助食品業界の両方で人気が高まっています。たとえば、αリポ酸は、通常の細胞の有酸素呼吸や代謝で生成されるフリーラジカルである活性酸素に対する作用があることから、強力な抗酸化物質であると考えられています。活性酸素は、私たちの内皮細胞(血管の表面)に対して深刻な影響をもたらしますが、これは結果として心血管系疾患の大きな危険因子となっており、特に加齢とともにさらに顕著になります。したがって、αリポ酸の心血管系疾患予防に対する最終的な効果を考える必要があります。αリポ酸は吸収さやすく、すぐに代謝され、組織にはあまり蓄積されないことが知られています。それでは、αリポ酸には「他の分子や代謝経路に影響を与えない即効性のある抗酸化物質」以外の機能があるのでしょうか。喜ばしいことに、その質問への答えは「あります!」と言えるようです。αリポ酸は、長期にわたって遺伝子や細胞の環境に影響を与える機能があるように、短期的にもフリーラジカルを除去する以上の機能、例えば代謝と遺伝子の転写に対して効果があるのです。

多くの人が、グルタチオンは「主要な抗酸化物質」であり、酸化ストレスや身体への様々な攻撃に対する防御機構だと考えています。複数の研究で、αリポ酸が酵素活性を介してグルタチオンの総量と機能を高めることが指摘されています。αリポ酸は、いわゆる誘導因子として遺伝子レベルで働きかけます。つまりαリポ酸が遺伝子の転写に作用し、グルタチオンの合成を可能にして最終的には細胞レベルで利用可能なグルタチオンの量に影響を与えます。誘導因子として、αリポ酸は転写因子Nrf2と共に作用しますが、このことは抗酸化物質と解毒遺伝子を調節する際に重要です。αリポ酸は、肝臓のNrf2レベルを上昇させることが明らかになっています。近年の他の研究でも、αリポ酸がNrf2に作用し、SIRT1経路を介して肝臓中の脂肪とトリグリセリドの量を減らすことが明らかになりました。したがって、αリポ酸は、この重要な遺伝子転写プロセスを介して、グルタチオンの合成に重要な影響を与えていると考えられます。αリポ酸は、グルタチオンの合成に不可欠なアミノ酸であるシステインをより多く合成するための媒介要素としても機能しています。このシステインの効果も、同様にNrf2経路を介して発揮されている可能性が示唆されました。

様々な酸化ストレスと炎症経路に関与しているもう一つの重要な分子はNF-κBです。NF-κBは、これらの身体への攻撃を引き起こす遺伝子の誘導因子です。現在、αリポ酸はNF-κBの発現を阻害する機能があり、NF-κBを発現させるTNF-αの能力も抑制します。TNF-αはサイトカインと呼ばれる広く研究されているタンパク質で、免疫系における働きと炎症に与える影響でよく知られています。したがって、αリポ酸は、直接的および間接的にNF-κBを阻害することによって、病理組織学的レベルでの炎症を予防するという重要な役割を果たしている可能性があります。

人間を対象としてαリポ酸の効果を調査した臨床試験はあまりありませんが、糖尿病性神経障害についての研究は複数あります。神経障害は患者個人の疼痛や苦痛だけでなく、患者や社会の財政的負担の観点からも糖尿病がもたらす大きな弊害のひとつです。現在、神経症の従来治療は非常に限られており、あまり有効ではありません。αリポ酸は、疼痛、灼熱感、ヒリヒリ感や感覚低下などの糖尿病性神経障害に関連する様々な症状を改善することが明らかになりました。αリポ酸の能力は、これらの効果に加えて糖代謝も改善します。 したがって、糖尿病と戦うすべての人にとって非常に有効な手段であると考えられます。

簡単に説明すると、αリポ酸は、遺伝子、酵素、細胞それぞれのレベルで多岐にわたる代謝プロセスに関与する、既知の重要な調節分子なのです。αリポ酸は酸化や炎症状態等のマーカーに直接的/間接的に機能します。残念ながら、αリポ酸は加齢とともに減少してしまうため、それによって内皮機能不全や免疫・酸化還元調節不全を引き起こし、やがてそれが原因で心血管系疾患につながるような前述の合併症を発症してしまうかもしれません。しかし、喜ばしいことに、高齢の動物を対象にした試験では、αリポ酸を食事に補うことによって加齢に伴うグルタチオンの減少が回復し、宿主の抗酸化状態が全体的に改善しました。αリポ酸が効果を発揮する経路において老化を防止することは、加齢に伴って発症しやすい疾患のリスクを減らすために重要です。αリポ酸は組織にあまり蓄積されないため、毎日摂取することが大切です。しかも通常食品に含まれる量が少なく、含まれていても吸収されにくいため、通常の食生活では不足しがちです。ですから、なおさらサプリメントで摂取することが大切です。αリポ酸は、一般的に1,200mg/日までの摂取では重要な副作用がなく、安全で長期服用も可能であると一般的に考えられています。

プロフィール
John E. Lewis氏

マイアミ大学 Associate Professor

John E. Lewis

マイアミ大学医学部精神・行動科学科Associate Professor、同補完統合医療センターDirector of Research、医療ウェルネス学会顧問を務める。テネシー大学ビジネス学科学士(1990年)、テネシー大学運動生理学修士(1992年)、その後、マイアミ大学教育心理学博士号(1995年)を取得。

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