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人間は牛乳を消化することができるか: 健康に必要か、もしくは気づかない間に病気を引き起こすか?

多くのアメリカ人は、牛乳から生産される乳製品を大量に消費しています。 歴史的には、牛乳は一年間の大半は農耕ができない気候条件の北欧に住む人々が、食糧不足の際に使用したものです。この伝統が時間を経て浸透し、最終的にはほぼ全ての消費者が、乳製品は健康的でより良い食生活のための総合的なアプローチであると思いこむようになってしまったのです。アメリカ合衆国農務省の食事に関する勧告によって、このことに疑問を持たない消費者は、乳製品はカルシウムを含み、含有するたんぱく質の種類が限られていることから、健康に良いだけでなく、特に成長と骨や歯の維持のために不可欠であると考えてきました。酪農業界が酪農家の採算維持のために多額の政府補助金を受けることと並行して、業界を確実に存続させてゆくために行ってきた働きかけ、そして酪農業界の影響力によって、このメッセージは広く浸透したのです。酪農業界はロビー活動と並行してテレビや様々な形態、特に子供向けのメディアへの販売促進活動に多額の費用を投じ、例えば「牛乳は飲みましたか?」「牛乳を飲むと体が丈夫になります」というメッセージをいたるところで耳にするように仕組みました。これらのメッセージは消費者の購買行動に強烈な影響を与え、ほとんどの人が牛乳をはじめヨーグルトやあらゆるチーズまで、様々な乳製品を買うようになりました。

文化的、歴史的背景、ロビー活動やマーケティング活動を通じた業界からの影響に加えて、牛乳の味(砂糖や様々なフレーバーが入っているから)が好きだから、もしくは科学的な事実に無知であることからほとんどの人は乳製品を購入しているようです。表向きは乳製品はカルシウムとたんぱく質を多く含み「健康に良い」と認識されるため、乳製品を摂ることは良いことのように考えられるかもしれません。しかし、成人が他の哺乳類の母乳を飲むのは、地球上で唯一人類だけであるということを考えると真実が見えてきます。進化の観点から考えると、人類が健康を維持するために別の種の母乳を必要とするということは全く意味を成さないのです。「食料不足の悲惨な状況で、生存のために乳製品を摂ることが必要だった」という主張は可能でしょう。しかし、これを「健康維持のために乳製品を摂る」と言い換えることができるでしょうか?さらに、歴史上人類が進化の過程で次の段階に進むために牛乳が必要なのであれば、人類は今日までの進化を遂げることができなかったであろう、と主張する人もいるでしょう。しかし残念ながら、このような概念は一般的に消費者に受け入れられることができませんでした。そうでなければ、酪農業界ははるか以前に崩壊してしまっていたでしょう。

牛乳には栄養がほとんど含まれていないということは、議論の余地はありません。牛乳はカルシウム、ビタミンD、たんぱく質、脂質、炭水化物、ラクトフェリン、免疫グロブリンを含んでおり、明らかに子牛のための栄養としては栄養がありますが、その比率が種によって異なるだけで、全ての哺乳類のミルクはいずれもこれらの栄養を含んでいます。牛乳には59種類の異なる下垂体、甲状腺、視床下部、膵臓、甲状腺、副腎、性別、および消化管ホルモンが含まれており、最終的にはそれ故に乳製品の摂取は問題なのです。これらのホルモンが様々な種類のがんや心疾患のような慢性病のリスクを高めるということを示唆する論文が増えてきています。これらの問題は、実際には全ての乳製品に含まれるインスリン成長因子-1およびカゼインが原因です。数年前に、非常に包括的で啓発的な記事が書かれましたが、この記事は乳製品の摂取を西欧諸国における多くの慢性疾患のリスク増加と関連付け、牛乳が成長ホルモン、インスリン、およびインスリン成長因子-1系に対して与える大きな影響によるものであることを示しました。成長ホルモン、インスリン、インスリン成長因子-1系は、全身の細胞の成長を調整する重要な役割を果たします。これらのメカニズムが機能不全になり、死亡した細胞や変異した細胞の除去を適切に行えなくなれば、このような細胞が増殖して酸化ストレスや発癌、アテローム形成等を通して慢性病の発生を引き起こす原因となります。したがって、このことを踏まえて考えると、乳製品とそれに含まれる高レベルの外因性ホルモンを、私たちに元来備わっている内因性ホルモンに組み合わせることは、本質的に火にガソリンを投げ込むようなものなのです。より多くの乳製品を摂取してホルモンを消費するほど、この炎はさらに燃え上がります。乳製品がオーガニックだったとしても、ホルモンに影響を与えます。もし仮に、ホルモン剤の投与を受けていない乳牛や、遺伝子組換えではない乳牛、産生する牛乳を増やすための成長促進剤を与えられていない乳牛から採られた牛乳であったとしても、このことには変わりありません。したがって、有機乳製品を食べるようにしても、がんや心臓病のような増殖性の疾患のリスクを軽減することはできないのです。

病気といえば、先程ご紹介した記事は、乳製品の摂取と心血管疾患、脳卒中、肥満、高脂血症、高血圧、糖尿病のような多岐にわたる慢性疾患のリスクとの相関関係を明らかにした研究を数多く提示しています。特に1歳未満で牛乳に曝露すると、Ⅰ型糖尿病のリスクが高くなるということです。乳製品の過剰な摂取は胸や結腸、とりわけ前立腺がんのリスク上昇と関係しており、このことはインスリン成長因子-1が乳製品に含まれることが原因となっています。インスリン成長因子-1は非常に強力で効率的な細胞成長促進物質、かつ増殖因子なのです。ある研究で、認知機能障害や記憶機能障害は乳製品の摂取と関係していることが発見されました。乳製品の消費量は、乳児の消化管出血の原因でもあることが明らかになっています。アレルギーは、長い間、乳糖不耐症に関連付けられてきましたが、これも同様に牛乳のたんぱく質が原因です。

乳製品の摂取と様々な疾患や障害との関係はこのように悲惨なものですが、さらに乳製品と骨粗鬆症との関係は、恐らく酪農業界が発信してきたメッセージに対する最大の侮辱でしょう。私達は誰しも「乳製品を食べなければ、いつか骨粗鬆症になってしまうでしょう」と言われ続きてきました。あなたはこの話を信じていますか?世間一般では、そのように信じられているのでしょうか?第一に、もし骨を大切にしようと思うのであれば、骨粗鬆症予防には「カルシウムの摂取ではなくカルシウムのバランス」が大切であるということを覚えておいてください。二番目に大切なことは、たんぱく質を多く含む(特に植物性ではなく動物性)食品によって、カルシウムの排出量が過剰になってしまいます。動物性たんぱく質によって排出されたカルシウムを補うことができなければ、骨粗鬆症を発症する危険因子となります。第三に、果物や野菜を専ら食べていると、たんぱく質量が減るため骨密度は高くなります。これらの食材は、カリウム(K+)やマグネシウム(Mg+)、カルシウム(Ca+)が豊富で、カルシウムの尿への排出による損失を誘発しないのです。第四に、1人当たりのたんぱく質摂取量が低い国では、骨粗鬆症と股関節骨折の発症率が低く、この関係性は低カルシウム摂取量の国でも変わりません。12年間の前向き研究のデータからでは、中年女性がより多くの乳製品やカルシウムを摂取することによって股関節や前腕の骨折を防ぐことができるという結果は示されませんでした。日常の食事からのカルシウムを専ら乳製品から摂取していた女性は股関節の骨折リスクが高く、一方で同じ量のカルシウムを乳製品以外から摂取していた女性では、骨折リスクの増加はみられませんでした。何ということでしょう!この文献に掲載されたデータは、酪農業界が広く喧伝しているメッセージに完全に相反するものです。乳製品の摂取は、骨の健康を維持する方法であると提起することは困難です。実際に、データでは全く反対の結果が示されています。同様に、私は乳製品を摂取することによって骨がより健康になったということを示す比較対照臨床試験を全く知りません。

結論として、乳製品は「健康的な食事」には含まれるべきではないということをこのデータは示しています。 それでは、なぜ乳製品は政府によって国民に広く推奨される食事に含まれているのか、という疑問が当然出てくるでしょう。乳製品が栄養に乏しいことを示しただけでなく、乳製品の摂取によって慢性疾患のリスクが高くなるということを明らかにした査読研究を一度にたくさん読んでも意味はありません。これらの知見は、ヒトを対象にした臨床試験、動物試験、人間の行動についての集団関連試験から横断的に導き出したものだからです。残念ながら乳製品は今日広く食べられていますが、このエッセイに書かれている情報が、みなさんが今後牛乳を飲んだり、チーズを食べることを考え直すきっかけとなるように願っています。短期間毎日の食卓から乳製品を排除するだけで、お腹の調子が良くなるなど体調がよくなったことを実感するだけでなく、糖尿病、がん、心血管疾患などの慢性疾患の長期的なリスクを大幅に削減することができるのです。3日間乳製品を食べずに過ごし、体調の変化を注意深く観察してみてください。体調がいつもと違うことにすぐに気付くでしょう。

 

プロフィール
John E. Lewis氏

マイアミ大学 Associate Professor

John E. Lewis

マイアミ大学医学部精神・行動科学科Associate Professor、同補完統合医療センターDirector of Research、医療ウェルネス学会顧問を務める。テネシー大学ビジネス学科学士(1990年)、テネシー大学運動生理学修士(1992年)、その後、マイアミ大学教育心理学博士号(1995年)を取得。

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