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有酸素運動と筋力トレーニングが筋骨格系と心血管にもたらす効果

現代社会と運動不足

世界中で肥満、2型糖尿病、様々な種類のがんのような慢性疾患が蔓延していますが、現代社会の一般的な生活では、これまでの世代に比べて運動量が低下しています。先進国の経済は、専ら情報や技術を中心とした経済へと移行しており、仕事で体を使う量が急激に減っています。したがって、建設業もしくは運動量が多く要求される職種に従事する場合を除いて、現代の長時間座ったままの生活によって引き起こされうる疾患に抗うには、もしかしたら計画的な運動トレーニングプログラムのみが現実的な唯一の方法であるかもしれません。「座ったままでいることは、新しい喫煙習慣である」と言われます。この言葉は、運動不足によって健康を大きく損なってしまうことに対して注意を喚起しています。

運動の効果については、冠状動脈性や様々な原因の心臓病による死亡率を下げる、糖尿病、高血圧、大腸がん、サルコペニア(筋肉疲労)、メタボリックシンドローム、骨粗しょう症、変形性関節症、身体障害、うつ病や不安などのリスクを下げるなど、様々な決まり文句を耳にします。つまり、運動による健康促進効果のすべてを1錠の錠剤にまとめることができたなら、あなたは人類史上最も価値のある薬を手に入れたようなものです。運動は健康促進に役立ちますが、皆さんは運動が内臓器官を含めた私たちの身体にどの様に影響するのか正確にご存じないかもしれません。今回は、運動が特に大きな影響を与える2つの重要な器官、 筋骨格系と心血管系の臓器システムについてお話しします。

トレーニングの原則

前述の二つの臓器システムについて考える前に、まず、トレーニングの「過剰負荷」、「特異性」、そして「適応」という3つの原則を理解する必要があります。過剰負荷とは、通常の範囲を超える負荷を身体にかけて、身体がこれに対して反応することです。 このトレーニングによって、身体は過剰負荷がかけられた部分を過剰に補修します。これは次回以降同様に負荷がかけられても耐えられるようになるためです。強くなり続けるためには、ストレスを強化する、つまり負荷を大きくしてゆく必要があります。また、身体はストレスに対して特異的に応答します。つまり、実践する運動によって、改善される部位が異なるのです。例えば、大胸筋、上腕三頭筋、三角筋前部はランニングではなくベンチプレスによって鍛えられます。強化したい部分に合せて、適応した種類の運動を選びます。運動トレーニングのプログラムで設定した目標によって、身体の適性が促進され、全身のバランスがとれた筋肉の増強が達成できるのです。このことを踏まえて、それぞれのトレーニングプログラムが、筋骨格系、心血管系の臓器に対してどのような効果を与えるのか考えてみましょう。

ウェイトトレーニング

先進のウェイトトレーニングプログラムを実践するのであれば、あなたは何よりも重要な結果を手に入れることができるでしょう-「強さ」です。筋肉は、身体がプログラムに慣れるにつれて以下のように徐々に強化されます。

・ 最初の2~3週間: 神経系が適応してゆきます

・ 最初の3~4ヵ月: 急速に筋骨格系が強化されます

・ それ以降: 強化のスピードがゆっくりになる、もしくは横ばいになります

最初の筋力が弱いほど、トレーニングの継続にしたがってより大幅に改善されます。強度が向上することに加えて、筋肉が増えたり成長することは、ウェイトトレーニングの最も目に見えて分かりやすい結果でしょう。持続的な筋肉の増加には以下の3つの要因が挙げられます。

(1)筋線維あたりの筋原線維の数量と大きさ

(2)収縮性蛋白(アクチンとミオシン)量の増加

(3)結合性、腱、そして靭帯組織での増加量が少ない

さらに、筋繊維の強度と断面積は相互に強く関係しており、筋繊維が大きいほどアクチンとミオシンのフィラメントの数量も多く、これらによって収縮時に大きな筋力を生み出すことができます。またウェイトトレーニングは収縮が早い筋繊維(速筋繊維)を特に強化することができ、その結果、筋線維の速筋線維から遅筋繊維までを増強することができます。筋肉量の増加と筋力の強化は同時に行うことができますが、トレーニングの量や期間と比例して直線的に増加するわけではありません。ボディビルディングのプログラムの反復によって最終的に筋肉量を増やし、一方でパワーリフティングによって筋力を高めることができます。それぞれのトレーニングは、以下の通りです。

ボディビルディング:筋肉を増やします

・ 速い速度で繰り返します

・ セット間の休憩は短くします

・ 重量は軽く、回数を多くします

パワーリフティング:筋肉の強度を高めます

・ 非常に重い重量を繰り返します

・ 最大量の重量で、回数は減らします

・ セット間での休憩を長くとります

最後に、ウェイトトレーニングは骨密度の上昇効果もあり、これによって筋細胞のミトコンドリア密度が低下し、クレアチンリン酸、アデノシン三リン酸、グリコーゲンの濃度を上昇させる効果もあります。一般的なガイドラインとして、以下のように主な筋群を全て鍛えるようにすることをお勧めします。

ボディビルディングのガイドライン

① 毎週1~2回、それぞれの部位について2~4パターンを3セットずつ実施します

② 各セットを8~15回繰り返し、1つの部位につき合計12~15セットを目安にします

③ 各セット間の休憩は、1分30秒を超えないようにします

④ これらのトレーニングを始める前に、必ずウォーミングアップとして2~3セット実施します

有酸素運動 

このような筋力強化トレーニングの他に、有酸素運動、もしくは心血管系を強化する運動も大切です。 有酸素運動は一定の時間リズミカルな活動をする運動です。例えば、一定の状態での運動を20~60分間、それから10~20分間のインターバルトレーニングを行います。有酸素運動には、ウォーキング、ジョギング、ランニング、全力疾走、水泳、ボート漕ぎ、サイクリング、エアロビクス、また、階段ステップ、グライダー、もしくはエレプティカル(ペダル踏み)などがあります。有酸素運動が心血管系や呼吸器系に与える効果については、数10年前における心臓のリハビリについての初期の研究から調査が進められ、その後、世界中で数多くの研究によって明らかにされてきました。 ウェイトトレーニングと同様に、有酸素トレーニングに対する心血管機能の初期の向上は、少なくとも神経系機能が改善したことが原因の一つとなっています。有酸素トレーニングは、有酸素力(VO2max = 最大酸素摂取量)を向上させることが明らかになっています。簡単に言うと、心臓の活動効率が改善され、より少ない酸素で同じ量の作業を行うことができるのです。有酸素運動を続けることによって、作業中の心臓の筋肉で消費される酸素の量が削減されることが、計測した結果から明らかになっています。安静時の心拍数と血圧が低下し、また、運動を継続するにつれて運動中の心拍数と血圧反応も低下します。有酸素運動によって有酸素力が向上し、心臓・呼吸系が増強されます。つまり、心臓の大きさと容量、血液量と総ヘモグロビン、心拍出量(安静時および運動時)、血液から排出される血液量、肺気量、最大心拍出量などが改善されるのです。筋骨格系も有酸素運動によって強化されます。細胞内のミトコンドリアの数と大きさ、細胞内のミオグロビンと中性脂肪の蓄積量、酸素、酸化的リン酸化、および結合組織の引張強度が増強します。心血管の健康に直接影響を及ぼす有酸素運動のメリットは、HDLコレステロールの上昇とLDLコレステロールの低下です。100メートルの短距離走のような高強度インターバルトレーニングをする場合を除いて、有酸素運動によって遅筋萎縮繊維が特に増加します。骨におけるミネラルの密度が有酸素運動、つまりウォーキングや水泳のような軽荷重もしくは非荷重活動によって大きな影響を受けることは、あまり知られていません。有酸素運動は、中程度または高強度でほぼ毎日20分以上行うことによって、最適な効果を生み出します。

バランスのとれたトレーニングプログラム

好き嫌いにかかわらず、ウェイトトレーニングと有酸素運動両方の効果を得るためには、両方をバランスよく取り入れてより良い健康状態を造り出すことが必要です。 同じセッション中にウェイトトレーニングと有酸素運動の両方組み込み、ウェイトトレーニングを有酸素運動の前に行うことによって、筋肉の貯蔵グリコーゲンを最大限に活用することが出来ます。最良の健康状態を得るために、毎日運動するように努力しましょう。

プロフィール
John E. Lewis氏

マイアミ大学 Associate Professor

John E. Lewis

マイアミ大学医学部精神・行動科学科Associate Professor、同補完統合医療センターDirector of Research、医療ウェルネス学会顧問を務める。テネシー大学ビジネス学科学士(1990年)、テネシー大学運動生理学修士(1992年)、その後、マイアミ大学教育心理学博士号(1995年)を取得。

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