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健康な生活のための食生活、栄養と運動

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自然食品、野菜を基本とした食生活は健康増進と長寿の秘訣?

はじめに 

健康のためにはどのような食生活が最も望ましいのか、という問題については様々な議論が交わされています。 マスメディアの情報は気まぐれで、健康的な食事のための最善の方法を喧伝している一部の会社のマーケティングに左右されて、変わりやすい傾向にあると言えるでしょう。これまで、様々な企業がロバート・アドキンスダイエット、サウス・ビーチダイエット、ゾーンダイエット、そして近年ではパレオダイエットのような食事方法を紹介し、ある程度の好評を得てきました。これらの食事方法は、脂質の種類や量は異なるものの、いずれも共通してたんぱく質を多く摂取して脂肪の摂取量を減らすことを強調していますが、その目的は明確ではありませんでした。その一方、体重の増加を気にしている方については、これまでは非常に長い間、摂取カロリーの管理が重要視されてきましたが、近年では食事の内容が重要視されています。それにも関わらず、これらの食事方法は、臨床試験や疫学的観察のような科学的根拠ではなくマーケティング的な視点に依存してきました。

また、私たち消費者は栄養科学について非常に脆弱であるという不幸な状況に置かれてしまっています。一般の方々がご存知かどうかはわかりませんが、栄養学の本質として、様々な仮説の決定的な原因と結果を、試験によって確認する方法はありません。例えば、生まれたばかりの人間を施設に入れて対照群、もしくは特定の食事方法群として養育し、いつどのように亡くなるかを論文化することは、倫理的な観点から不可能です。第二に、食物について、プラセボ対照の臨床盲検を計画することはできません。第三に、食べ物と健康(または病気)の関係についての結論を導き出すために充分な臨床試験を設計するのは、非常に高額なうえに、条件の遵守、コンプライアンス、および信頼性の問題を伴うでしょう。第四に、想起バイアスや不正確な点があるため、報告行動に一定の分散(エラー)が生じることから、これらの結果は状況に応じて考慮されなければなりません。第五に、人間とその他の種は明らかに遺伝的、器官系が異なるため、上層の霊長類やげっ歯類における食べ物と健康の関係を示した研究は、必ずしもそのまま人間に当てはまるとは限りません。栄養科学における欠陥について、まだ指摘することはたくさんありますが、読者の皆さんは、私が何を指摘しようとしているかすでにお分かりでしょう。つまり、我々ができる最善の方法は、(a)細胞、組織、動物における前臨床試験、(b)小規模の短期臨床試験、および(c)大規模の観察的、疫学的研究の結果を検討して、それらの傾向、そして、もし研究の間に共通点があれば、それを突き止めることです。

植物を基本とした食事療法の科学的根拠

それでは、この問題を科学的に検討してみましょう。興味深いことに、横断的研究や大規模な疫学的観察などのデータからは、野菜を主として野菜全体を食べる食生活(ベジタリアンやビーガン)によって、死をもたらす慢性病を避けてより健康に長生きをする可能性が非常に高くなると考えられます。例えば、昨年は110,000人以上のアメリカ人のうち、動物性たんぱく質を多く摂取したことによって、心血管疾患による死亡率が優位に高まり、逆に、植物たんぱく質を多く摂取したことによって、死亡率が低下したことが明らかになりました。また、この研究を担当した医師は、動物性たんぱく質(特に加工した赤身の肉)の摂取を中止し、代りに植物性たんぱく質を摂取することによって、死亡率が低下したことを明らかにしました。別の研究でも50,000人を超える患者を対象に同様の結果が明らかにされており、赤身の肉や加工肉を多く食べることによって、男女ともにがん、心血管疾患をはじめ、様々な原因による死亡率の増加が見られました。野菜を基本とした食事は、がん、心血管疾患など、様々な原因による全体的な死亡リスクを下げるだけでなく、重篤な冠動脈疾患からの回復、血清総コレステロール値、低比重リポ蛋白コレステロール値や高血圧リスクの低減、2 型糖尿病による死亡リスクの低下、そして肺癌と大腸癌の発生率低下にも関与していることが明らかになりました。

野菜を基本とした食事によって、なぜ致死率の高い病気を防ぐことができるのでしょうか?このことは、データによって明確に示されています。近年推奨されている食事方法では、脂肪のみではなく、他の要素が様々な効果を発揮することが示されていますが、野菜を基本とした食事方法では脂肪や飽和脂肪が少なく、そのため心血管疾患やがんによる死亡率を低下させることが、歴史的に明らかにされています。つまり、野菜を基本とした食事によって、心血管疾患の原因となる血清ホモシステイン濃度を低下させる葉酸、ビタミンC、E、カロテノイドのような抗酸化物質や、その他の健康にとても大切な植物性栄養素を高濃度で摂取することができるのです。食物繊維、野菜、果物を多く食べることは、腸内フローラと腸内環境全体にとても良い効果をもたらします。最後に、野菜を基本とした食事を実践している人は、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸値が低く、血小板のリン脂質中のリノール酸や抗酸化物質の値が非常に高いため、アテロームの発生や血栓形成の低減に関係していると考えられます。

逆に、調理した肉や加工肉には、ヘテロサイクリックアミン、多環芳香族炭化水素のような発がん性物質、およびN-ニトロソ化合物を含みますが、これらは全てがんのリスクを高めます。赤身の肉に含まれる鉄は、酸化によるダメージを増幅させ、N-ニトロソ化合物の生成を増やします。さらに、肉には飽和脂肪酸が多く含まれ、乳がんや大腸癌との関係が指摘されています。

結論

人類のほとんどの文化圏において、これまで歴史を通してすでに肉類を摂取していますが、この30年間で肉類の摂取は、早期死亡や慢性疾患による死亡をもたらすということが、科学によって明らかにされています。食生活は、多くの人々にとって、文化、社会、心理学、宗教などの様々な要素に基づいており、残念なことに生理学的知見や、健康にとって最も大切なことに逆行することが多いのです。 多くの方々は、完全に肉類を食べるのをやめることを嫌がることでしょう。しかし、少なくとも野菜を基本とした食事が健康に与える影響についての科学的な証拠を認識する必要があるでしょう。このことは、「知らぬが仏」ではないのです。つまり、私たちは、特定の種類の食べ物を口にすることと、慢性疾患や早死との関係について、認識するべきなのです。肉類を食べることを完全にやめなくても、その量を減らすだけで健康によい効果があるでしょう。 最終的には、このことを認識して食生活を変えることができるかが、私たち一人一人の生活の質だけでなく、社会、そして世界に良い影響をもたらすことでしょう。 最後に、野菜全体を食べる、野菜を基本とした食生活を心掛け、健康長寿を楽しみましょう!

プロフィール
John E. Lewis氏

マイアミ大学 Associate Professor

John E. Lewis

マイアミ大学医学部精神・行動科学科Associate Professor、同補完統合医療センターDirector of Research、医療ウェルネス学会顧問を務める。テネシー大学ビジネス学科学士(1990年)、テネシー大学運動生理学修士(1992年)、その後、マイアミ大学教育心理学博士号(1995年)を取得。

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